最強バトルの人 / 第11話

第9話 主人公たち

―― キキィィィーーーーーーーッッッ ボン! 「――なんだよ、ネコかよ! あーもう、新車のバンパーがヘコんじまったじゃねえか! くそ!」 * 最悪だ。日曜日なのに。 目の前でネコが轢かれるのを見てしまった。 ぼくは、歩道に飛ばされたネコに急いで駆け寄った。 「――大丈夫? ……痛くなかった?」 「……ニ…ャ…」 こどもの三毛猫。 眉毛みたいな位置に模様がある。 近づいてわかった。 駄目だ。残念だけど、血がたくさん出ている。 このネコはもうすぐ死ぬ。 でも。 大丈夫。大丈夫だよ。 動かなくなる子猫の頭を撫でながら、 ぼくが来たから大丈夫。そう話しかけた。 スマホで時計を見る。 午後6時30分。夕陽が沈み始めるころ。 よし。 守れるものは守れるときに守りたい。 ぼくの信条だ。 右手をポケットの中に入れ、こう念じた。 ―― これは、夢だ ――。       ・ ・ ・ ・ ・     朝。 目が覚めたぼくは、小さな声でつぶやいた。 久世「なんだ、夢か。」 時計を見る。午前8時。 よし、時間はたっぷりある。 起こった現実を睡眠中の夢に変えるチカラ。 このチカラがあれば、子猫だって、轢かれる前に助けることができる。 * ここにもいない。 眉毛みたいな模様があるこどもの三毛猫。 さっきの場所の周辺をどれだけ探しても、見つけ出すことができなかった。 久世「……おーーい、子猫ーーー。出ておいでーー。煮干しもあるよー」 困ったな。 スマホを見る。午後6時25分。 子猫が轢かれるまで、もうあと5分もない。 こうなったら、こうするしかない。 子猫が轢かれる地点で待ち、轢かれる寸前で車道に飛び込んで助ける。 少し怖いけど、大丈夫。 ぼくだったら、できる。 失敗しても、夢にできる。 大丈夫、大丈夫。 そう、自分に言い聞かせた。 * ――ブーーーーーーーゥン   ――ブーーーーーーーーゥン 午後6時29分。あと一分。 交通量の多い車道のそばで、いつ飛び出すかと体を強張らせたぼくは、大事なことを思い出した。 ――しまった。肝心の車の方をよく見てなかった。 色、車種、ナンバープレート、運転手。 特徴をまったく思い出せない。 どうしよう。 勇気が少しなくなりかけたとき     子猫が車道に飛び出―― 「――っっ危ないっ!!」 ―― キキィィィーーーーーーーッッッ     反射的に飛び出して、子猫を抱きかかえた。     でも。 あ。     駄目だ。     失敗した。     動きがスローモーションに見える。     車は、子猫どころか。     ぼくまで轢く。     失敗した。     失敗した。     また、夢に――     右手をポケットに入れ――――     ――――間に合うのか?       あ。 だめだ。     うそだ。       ――――――ぼくが、死――――?。     ぼくは、子猫に抱きつきながら、目をつぶった。     *       ――――――ドッッッッッンッッ!!! 凄まじい衝突音が聞こえ、周りの人が叫んだ。 「交通事故だーーー! 子どもが轢かれたぞーーー!」         そうだ。ぼくは死んだ。 チート能力があったって、最後はあっけないものだ。 意外と、痛みは感じない。 子猫を助けて、車に轢かれて、死亡。 久世あると、14歳。異能力者。ここに死す。 周りの人1「――だれか救急車!救急車!」 周りの人2「なんだー!煙で見えないぞー!」 ニャー うるさいな。はやく死なせてくれ。 死んでても音は聞こえるものなのか。 いつまで聞こえるもんなんだ。 周りの人3「――そうよあの娘急に飛び出して――」 周りの人4「あんな若いのにざんねんだ――」 ニャー ニャー ハグハグ   あれ、おかしい。   痛くないし、声は聞こえるし、体は温かい。 両手で抱きかかえた子猫の体温だ。   子猫「ニャー ニャー」ハグハグ   ――? 目を開けると、車から出た煙が辺り一面を覆っていた。 子猫は、ぼくの手から煮干しを奪って食べている。 その時、とつぜん風が吹き、視界が一気に晴れた。   小柄な女の子だ。 お団子頭に拳法着のその子が。 夕陽をバックに、ぼくの目の前で車を片手で止めている。 情報を処理しようと、考えていると――。 シャオ「――かわいい子猫を轢こうとするなアル拳ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」 ドッカーーーーン!! 車&運転手「ぐはああああああああああ!!!!」 女の子のパンチで、車は天高く舞い上がり、ヒューンと落ちた。            │      │      │      │      │   シャオ「再見《さいつぇん》《さようなら》!」はぐっ   \どがぁぁぁぁぁぁあん!/       車は爆発。女の子はぼくの手から煮干しを奪って食べた。 なんだ。だれか説明してくれ。 * 女の子はこちらを振り返る。 そして、ぼくの全身をじーーーっと見ている。 耐えきれなくなって、口が動いた。 久世「な、なんですか。あなたは――」 シャオ「――ちょっと、くるアル」グイッ その子はぼくの服を引っ張ると、タンッと踏み込んだ。すると、今まで体験したことのないスピードでぼくの体が浮き上がり、激しい風がぼくを襲った。 久世「――――ぅわあぁあぁあああ!!」 シャオ「うるさいアルね。黙ってついてくるアル」 どさっ 人気のない路地裏にぼくは連れこまれた。 げほっ。げほっ。すごい速さだった。 口の中がかわく。 すると、その女の子は。まるで拳法?のような構えをし、ドスの効いた声で言った。     シャオ「――お前が、“黒龍拳のウーミン”アルね。爸爸《ぱーぱ》の仇……! 覚悟するアル!」 こくりゅうけんのうーみん。 誰だそれ。 面食らったぼくは、言葉を探す。 久世「――ひ、ひとちがいで――」 ?「まてーーーーーーーーーーー!!!」 するとそこに、頭が綺麗な体格の良い男と、パンダが走ってやってきた。 ドウ「――はぁっ! はぁっ! すぅ――、っっシャオ! 待て! といったら待てっ!!」 シャオ「――いいところに来たアル、ハゲ。 こいつがっ! この、全身黒い服に身を包んだ見るからに怪しいひょろひょろのモヤシ男こそがっ! 私の爸爸《ぱーぱ》を殺した闇の拳法家っっ!! その名もっっ! “黒龍拳のウーミ――!」 ドウ「――って、どう見ても違うだろーっ!!」ポカーン シャオ「アイヤー!」 ハゲの人が、女の子の頭を軽く小突いた。     ◆━━━ 最 強 バ ト ル ━━━◆ 番外編「子猫を先に助ける勝負」 シャオ・ロンパオ vs 久世あると ――――――勝者 シャオ・ロンパオ ――――決まり手 かわいい子猫を轢こうとするなアル拳 ━━━━━━━━━━━━━━ * シャオ「――すまんアル! 誤解だったアル! かんにんアル!」バシッ 両手を合わせて謝る女の子。 そのそばでは、パンダと子猫が楽しそうに遊んでいる。 久世「い、いいえ。お互い様ですから」 なにがお互い様なんだ? うろたえて変なことを言ってしまう。 こっちのベースがたもてない。 ぼくは異能力者だぞ。すごいんだぞ。 なんで、頭にお団子のついた中華娘の具現化みたいな子がいるんだ。 ぼくが主人公じゃなかったのか。 ドウ「――だいたいお前、5日間不眠不休でここまで、西って言いながら東に行ったり、泳いで海を渡ったり、しかもここは日本だ! 国を勝手に越えてしまうなんて、めちゃくちゃだぞ! おそらく不法入国になるぞ! たぶんすごく怒られるぞ! あと、全身黒い服の人なんて、そんじょそこらにいるだろ!」 女の子と頭が綺麗な人がしゃべっている。仲良さそうなふたりだ。 シャオ「わからなかったアル。許せ、ハゲ老師」 ドウ「老師ってつければ俺が喜ぶとでも思うか?! いいか! とにかく今後は、俺がウーミンの手がかりを探すからなっ!! あと、今さらだが俺はハゲじゃな――!」 女の子がくるっと振り返ってぼくを見た。 シャオ「ときにひょろひょろ全身真っ黒モヤシ少年。名前を聞いてなかったアルな。なんと呼べばいいアルか?」 久世「な、名前ですか? く、久世《くぜ》といいます」 シャオ「久世か。私は、シャオ・ロンパオ。年は17才! 拳法家アル!」 ぼくは驚いた。 この子、いや、シャオさん。ぼくよりみっつも年上だったのか。 シャオ「なんか久世とは、どこか似ている気がするアルな。じゃ! 再見《さいつぇん》《またあおう》!」 もう行くのか。いやまて、さっきなんて言ってた? 中国から5日間不眠不休で、日本まで泳いで来た? そんな人間がいるのか? 向こうでは普通なのか? それとも、ぼくがひょろひょろモヤシ男だからなのか? そう考えていると頭の非常に綺麗な人が輝きながら話しかけてきた。 ドウ「――久世くん。ほんとうにすまなかったな。俺はドウ・ナットンジャ! シャオと子パンダと共に、老師《ちち》の仇討ちの旅をしている! またどこかで会おう! では!」キラッ 子パンダ「キュウ〜」バイバイ 子猫「ニャ〜」マタネ なんだか、こんな不思議な出来事が、あたかも当たり前だったかのような気がしてきた。 そういえばこの前も、テレビの中の人だと思ってた怪人が、目の前に現れたじゃないか。 次はなんだ。魔法使いとか、アンドロイドでも現れて、みんなでだれが最強かを決めるとでもいうのか? 久世「ふふっ」 考えたらバカバカしい。ぼくは笑って、家に帰った。 * シャオ「――ハゲ。さっきの一発。忘れてないからなアル」 ドウ「ドキッ」

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