Tihoo / 第83話

第八十三話 「竜娘の高すぎる体温と『フーリエの法則』。疲労回復の物理マッサージが、極限の密着スキンシップに発展した」

王都での死闘を終え、アリアの右腕も無事に完治した数日後。 俺たちは辺境の屋敷へと帰還し、ようやく本来の目的であった「平穏なスローライフ」を取り戻していた。 アリアはエリスと共に念入りな屋敷の清掃(動摩擦係数は正常だ)に勤しみ、クロエは自室で新たな因果律の実験に没頭している。 そして俺は、自室のふかふかのベッドに腰掛け、久しぶりの静寂と物理学の洋書を楽しんでいた。 「……平和だ。エントロピーの増大も、局所的で非常に緩やかだ」 コンコン、と控えめなノックの音が響くまでは。 「ししょー……起きてる?」 ドアの隙間から顔を出したのは、竜族の少女・ミリムだった。 「どうしたミリム。もう夜も遅いぞ」 部屋に入ってきた彼女の姿を見て、俺は思わず本を落としそうになった。 ミリムは自分の服ではなく、明らかに俺の予備の白シャツ(彼女にとってはブカブカのオーバーサイズだ)を一枚だけ羽織った状態で、裸足のままペタペタと歩いてきたのだ。 シャツの裾からは引き締まった太ももが剥き出しになっており、動くたびに襟元から無防備な肩や、成長途中の柔らかな胸の谷間がチラチラと覗いている。 「あのね、ししょー。王都でいーっぱい重たいバット振ったでしょ? そのあとから、背中とか、足とか、なんだか重たくて、痛いの……」 ミリムは潤んだ瞳で俺を見上げ、自分の太ももをさすった。 「筋肉痛か。あのタングステン鋼のバットで数十トンもある多脚兵器をかっ飛ばし続けたんだ、いくら竜族の膂力でも筋繊維に微細な断裂(ダメージ)が溜まっているんだろう」 「うぅ……痛くて眠れないの。ししょー、治して……?」 俺のシャツの裾をきゅっと掴み、上目遣いで甘えてくる竜娘。 野生動物のように純真で、警戒心ゼロのその仕草に、俺の冷静な物理学者の理性(と下半身)が僅かに揺さぶられる。 「……仕方ないな。こっちに来い」 「わぁい!」 俺がベッドの空いているスペースを叩くと、ミリムは嬉しそうに飛び乗ってきて、なんと俺の太ももの上に『対面座位』のような形で跨ってきた。 「おい、ミリム。近すぎるだろ」 「えへへ、ししょーの匂い、落ち着くから好きー」 俺の首に腕を回し、ぴたりと身体を密着させてくるミリム。 薄いシャツ一枚越しに伝わってくる彼女の体温は、常人のそれよりも遥かに高く、まるで熱を帯びた湯たんぽを抱きしめているかのようだ。甘い石鹸の香りと、ほんのりとかいた汗の匂いが鼻腔をくすぐる。 「……マッサージをしてやる。少し熱くなるが、動くなよ」 俺は湧き上がる煩悩を無理やり「物理演算」の思考で押し殺し、ミリムの華奢だが引き締まった背中と腰に、両手を這わせた。 直接肌に触れると、彼女のすべすべとした肌の異常な熱っぽさが手のひらから伝わってくる。 ――【物理干渉:高周波微振動(マイクロ・バイブレーション)】 俺は手のひらから、人間の耳には聞こえない超音波領域の微細な振動を発生させた。同時に、血流を促進させるための局所的な熱伝導を開始する。 「ひゃあッ……!? し、ししょー、なにこれ、なんか、奥のほうが……ブルブルして、あったかい……っ!」 ミリムの身体がビクンッと大きく跳ねた。 「固まった筋膜を、音波の振動で物理的にほぐしているんだ。さらに熱エネルギーを送り込んで、乳酸の分解を促進させる」 熱伝導における『フーリエの法則』。単位面積あたりに流れる熱流束()は、温度勾配()に比例する。 「竜族の皮膚は熱伝導率()が非常に高い。俺の体温と魔力の熱が、お前の深部の筋肉まで一気に浸透して――」 「あ、あっ、あぁんっ……! だ、だめ、そこ……腰、変な感じになるぅ……っ!」 ミリムの口から、無防備で、ひどく艶っぽい嬌声が漏れた。 俺の手が腰のくぼみから太ももの付け根へと滑るたび、高周波の振動が彼女の敏感な神経を直接撫で上げる。 快感と熱の相乗効果で、ミリムの体温はさらに急上昇していった。 「し、ししょー……暑いよぉ……身体の奥が、熱くて、ムズムズするの……っ」 ミリムは荒い息を吐きながら、俺の胸元に顔を擦り付けてきた。 彼女の吐息が俺の首筋にかかり、ゾクゾクとするような感覚が背筋を走る。 それだけではない。熱を持て余した彼女は、無意識のうちに俺の白シャツのボタンを引きちぎる勢いで広げ、素肌と素肌を直接密着させて『放熱』しようとしてきたのだ。 「おいミリム、服を脱ぐな! これ以上密着したら、俺の方まで……!」 「だって、ししょーの身体、冷たくて気持ちいいんだもん……もっと、くっついて……あっ、手、やめないで……っ」 ミリムの太くて滑らかな竜の尻尾が、俺の足に蛇のようにぐるぐると巻き付いてくる。これは竜族特有の、愛情表現……いや、交尾期のマーキング行動に近いのではないか? 豊かなふくらみが俺の胸に押し付けられ、柔らかな太ももが俺の腰をきつく締め付ける。 振動マッサージによって極限までほぐされた彼女の身体は、まるで液体のようにおそろしく柔らかく、俺の身体の形に合わせて完全に密着(フィット)していた。 「んんっ……ふぁっ、ししょー……なんか、バット振ってた時より、もっとドキドキする……もっと、奥まで熱くして……?」 とろんと潤んだ瞳で、ミリムが俺の唇を見つめながら甘く囁く。 その顔は、いつもの無邪気な子供のそれではなく、完全に発情しかけた「メス」の顔だった。 「(……くそっ、竜族の基礎代謝と熱伝導率を甘く見ていた! このままじゃ、物理の授業どころか『生物の授業』に突入してしまう!)」 だが、俺の手は彼女の滑らかな肌の感触に吸い付いて離れない。 摩擦係数が最適な状態で密着した男女の肌。そこから生じる熱量()は、もはや俺の理性のキャパシティを完全にオーバーフローさせようとしていた。 「ししょー……たべちゃ、だめ……?」 ちゅっ、と。 ミリムの熱い唇が、俺の首筋に甘く吸い付いた。 「……お前、明日アリアやクロエに知られたら、ただじゃ済まないぞ」 「かまわないもん。いまは、ししょーと、熱いの、まざりあいたい……」 俺は深くため息をつき――もう、物理法則に逆らう(抵抗する)ことをやめ、熱を帯びた竜娘の身体をベッドへと押し倒した。 夜の屋敷に、熱力学では説明のつかない甘く濡れた吐息が、いつまでも響き続けた。
「フーリエの法則がえっちなことに使われてるw」「ミリム可愛すぎるしエ◯い!」 と思っていただけたら、 【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】評価をお願いします!

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