たぺっと!! / 第8話

たくさんの神様と契約して異世界で最強目指してるものです〜8話〜神同等〜

「この試験では、こはるの力を使用することは不可とする!」 アルクレスが厳かに告げると、脳内に響いていたこはるの念話がぷつりと遮断された。神の結界により、他者の干渉が完全に絶たれたのだ。 「わかりました」 「素の力で戦ってもらう。もしもマナをすべて使い切った時や、絶望の淵に立たされた時、最後に一番頼りになるのは己自身の力のみだからな……」 「あはは……。そういう場面は、これまでの旅で嫌というほど経験してきましたから!!」 不敵に微笑むと、体内に流れる炎神の魔力を一度完全に遮断した。そして、自身の奥底に眠る、純粋な魔力と闘気を解放し、全身に纏わせる。 ――ゴオオォォォ……!! 体から立ち上る、底知れぬ魔力のプレッシャー。 それを見たアルクレスは、目を見開いて息を呑んだ。 「なんと……!! 素の力でこれほどの気配を放つというのか!? こはるが認めるだけはあるな。これならば、人間の規格でいう『SSランク冒険者』に匹敵する実力はあるだろう」 「ありがとうございます。で……何を倒せば、試験クリアになりますか?」 そう問いかけた、次の瞬間だった。 ――ゴゴゴゴゴゴゴ……!! 大地が激しく揺れ、さっきまで青く澄んでいた空が、まるで血を流すかのようにドス黒い赤へと染まっていく。 「これは……!!」 アルクレスが険しい表情で天を仰いだ。 「月が太陽に重なる時、空が赤く染まる……1000年に一度しか起きない、世界を滅ぼす災厄の予兆——『終焉の月』だ……! てぺ、試験は中止だ……!!」 「……はい……えっ!?」 あまりの急展開に戸惑っていると、遮断されていたはずの脳内パスに、ザーザーと激しい砂嵐のようなノイズが混ざり始めた。 『て……ぺ……聞こえる……か…………?』 「こはる!? くそ、ノイズが酷くて声がよく聞こえない……!」 焦る表情に対し、アルクレスは赤く染まる月を見つめたまま、不敵に唇を吊り上げた。 「落ち着け、てぺ。……いや、これは逆にチャンスかもしれない」 「チャンス?」 「てぺよ……。私の名刀を今、お前に渡す。お前なら、この『終焉の月』を終わらせられるかもしれない……!」 アルクレスがその手に携えていた、風を切り裂くような美しい緑の太刀を差し出す。 風神の名刀——その名を、『蒼翠嵐(そうすいらん)』。 「これが……名刀……『蒼翠嵐』!!」 刀を受け取り、その柄を握りしめた瞬間、全身を爆風のような神気が駆け巡った。 ――グオオオオオオオッ!!! その時、天を覆う赤い雲を切り裂き、雄叫びを上げながら無数のレッドドラゴンの集団がこちらへ向かって猛スピードで降下してきた。その数は数十、いや、数百。世界を終焉に導く眷属たちだ。 静かに蒼翠嵐を鞘に収め、低く身構える。 迫り来る絶望を前にして、心はどこまでも静寂に包まれていた。 「すぅぅぅぅ……」 深く息を吸い込む。 「すべてを断ち切れ……。終焉には、裁きを。……太刀術・強制『蒼翠嵐・抜刀』!!」 ――カツン…… 抜刀の構えをとった瞬間、周囲の空気の流れがピタリと停止した。世界から音が消え、ただ一筋の風だけが刀身に収束していく。 「——『蒼空(そうくう)の裁き』!!」 ――キィィィィィィン!!! 閃光。 一瞬にして放たれた斬撃は、視界を埋め尽くしていたレッドドラゴンの集団を、彼らの背後に広がる巨木の森ごと一刀両断にした。 それだけでは留まらず、斬撃の波動ははるか彼方の巨大な山岳をも一瞬で粉々に砕き散らした。 「な……んだと!!?」 アルクレスが、顎が外れんばかりに目を見開いている。 「あれだけの大群のレッドドラゴンを……一撃で!? それにあの斬撃の鋭さ……まるであの日の、全盛期の私じゃないか!!」 「ふぅ……。まだまだいきますよ?」 刀を軽く振って残心の姿勢をとると、頭の中に、今度ははっきりとしたこはるの声が、そして大爆音とともに響き渡った。 「——『不死鳥烈焔(フェニックス・フレア)』!! おーい!! てぺー!!」 ――ドカーン!! ぎゃおーん!! どどどどどーーーん!! 遠くからかすかに、何かが爆発するような地響きが聞こえてくる。 「こはる!? 今、何て言ったの?」 「まさかお主の放った斬撃の波動が、はるか南のハーネスティアにまで届いたわい! そこから漏れた魔力に釣られて魔物が街に押し寄せてきたから、妾が全部焼き払ってやったぞ!」 「えっ、そんな遠くまで私の斬撃がいったの!?」 冷や汗を流していると、アルクレスが嬉しそうに肩をバシバシと叩いた。 「こはる! こいつは間違いなく、いずれ世界最強になるぞ!! 初見であるはずの、全盛期の私の技を瞬時に体に順応させ、その後、完璧に再現して見せたんだからな! 見事だったぞ、てぺ!」 「ありがとうございます、アルクレス様! ですが、まだ空が赤いままです。残りのモンスターも、このまま一気に片付けちゃいましょう!!」 その言葉に、二人の神が同時に、嬉しそうに声を揃えた。 「そうだな!」 「そうじゃな!!」 「よし! 『身体強化』! 『攻撃判定』・『魔力制御』・『速度増強』!! そして……『結界魔法』!」 蒼翠嵐に、ありったけの魔力と二柱の神の加護を上乗せしていく。 「——絶対境界結界・『断炎(だんえん)』『断風(だんぷう)結界』『魔法結界』『斬撃結界』!!」 極大の五重結界が展開され、世界が完全に支配下に入る。 その時、結界の端に、不気味な魔力を放つ影がふらりと現れた。 「あら……こんなところにおいしそうな人間が……」 それは、どさくさに紛れて現れた強力な魔族・スクリューネだった。しかし、今の勢いにとっては、羽虫一匹と大差ない。 「——『煉獄共鳴・天嵐葬儀(れんごくきょうめい・てんらんそうぎ)』。」 ――ドゴオオオォォォォン!!! 炎と嵐が共鳴した超々極大の一撃が、出現したばかりの魔族を塵一つ残さず消滅させた。 「ん? 気のせいか? 今、魔族が見えた気がするが……って言うか!!」 「我らが出る幕、まったくなかったな……」 あきれ返る二人の神が、同時に空を見上げる。 いつの間にか赤く染まっていた「終焉の月」は完全に消え去り、そこには、どこまでも吸い込まれそうなほどの美しい青天が広がっていた。

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