⛰️終末 金剛山 / 第64話

Echo 10 『 お兄ちゃんのバカッ!!!! 』

サントラ イメージソングはこちらからどうぞ https://open.spotify.com/playlist/6bFZdpvxKZC0kdREsooTmc?si=a1feec7479d64356 対応番号 : 17
「それではと言っては何ですが、|屋敷《やしき》までおいでくださいませ」  彼女が乗っていた高級車の|後部《こうぶ》|座席《ざせき》に案内されると、|綾華《あやか》は大丈夫だと|頷《うなず》いた。 「では|遠慮《えんりょ》なく…」  そう言って俺たちは車に乗り|込《こ》んだ。 「|辻ノ《つじの》先輩は乗らないんですか?」 「…いや、今回は|遠慮《えんりょ》しておく。神社の|片付《かたづ》けもあるのでね」 「そうか」 「|由記《ゆうき》。その……なんだ。お前は命の|恩人《おんじん》だ。だからこれからは私を下の名前で呼ぶといい」 「えっと……|綾華《あやか》……先輩?」  |綾華《あやか》は少しだけ|不満《ふまん》な様子で|恥《は》ずかしそうに視線を|逸《そ》らし、耳の裏まで赤く染めてうつむいた。 「……あぁ、そう呼ぶといい」  俺は彼女に|別《わか》れを|告《つ》げ、|柔《やわ》らかな|革《かわ》の座席の|感触《かんしょく》を|背中《せなか》に感じながら、|宝生院《ほうしょういん》の車で|屋敷《やしき》へと向かった。  ———  ——— 車内にて 「それでは|改《あらた》めまして」  |宝生院《ほうしょういん》 |早七《さな》が、流れるような動作で言葉を切り出した。 「初めまして。そしておかえりなさい、“ゆうき”くん」  出会った瞬間から|肌《はだ》を|刺《さ》していた|奇妙《きみょう》な|既視感《きしかん》。|改《あらた》めて彼女の顔を|覗《のぞ》き|込《こ》むと、|吸《す》い|込《こ》まれるようなその|瞳《ひとみ》の色が、俺自身のそれと|鏡写《かがみうつ》しのように全く同じであることに気づき、|背筋《せすじ》に|微《かす》かな|痺《しび》れが走った。 「…俺のお姉さん、ということか?」 「そうよ、そしてあなたがまだ|執行者《しっこうしゃ》だった時、私は『運の女神』なんて呼ばれていたのよ」  彼女は|一瞬《いっしゅん》だけ、遠い地平を見るような|物寂《ものさび》しげな|眼差《まなざ》しを|浮《う》かべ、「まぁ、もう昔のことだけれど」と|吐息混《といきま》じりに|呟《つぶや》いた。 「その…」 「あぁ、|早七《さな》でいいですわよ」 「…|早七《さな》は、どうしてそんなに若いんだ?」 「あぁこれ?そうね、まずはあなたのことについて少し話さないといけませんわね」  彼女は、記憶の|澱《よどみ》を|掬《すく》い上げるように、ぽつりぽつりと|語《かた》り始めた。 「あなたが海に沈められた時、私たちも|黙《だま》っているはずも無かった。あなたを死刑にした人たちは、あなたの力だけを欲して何もかも|抽出《ちゅうしゅつ》した。そしてあなたは|抜《ぬ》け|殻《がら》になってしまった。」 「でも私たちの協力者が内部に|侵入《しんにゅう》して、あなたの力の源を一部|奪取《だっしゅ》することに成功した。それをみんなで分け合うことで、老化を遅らせている」 「遅らせるだけなのか?」 「えぇ、一番いい方法はあなたの体液を直接身体の中に流し|込《こ》むこと。それで若返りをするの。皮肉よね、人間の欲望のためにあなたが狙われるのは必然だって」  早七は、|慈《いつく》しみの色と深い悲しみが|混《ま》ざり合った|瞳《ひとみ》でこちらを見た。家族を守ろうと、細い指先で|懸命《けんめい》に運命を|繋《つな》ぎ止めてきた|必死《ひっし》さが、その表情から|滲《にじ》み出ていた。 「…俺を引き上げたのも、早七のおかげなのか?」 「私たちが引き上げた、と言うべきね。私はあなたの家族だから、ずっと目を付けられていたの。だから取引をしたの」 「取引?」 「まぁ内容なんて気にしなくていいわ。それより…」  彼女は俺の|瞳《ひとみ》をじっと|覗《のぞ》き|込《こ》み、|恍惚《こうこつ》とした、熱を|帯《お》びた表情で|膝《ひざ》の上に|跨《またが》ってきた。 「|弟君《おとうとくん》、おかえり♪」 「あぁ、私の可愛い弟、帰ってくるのをずっと心待ちにしてたのよ」  彼女は|強引《ごういん》に俺の口を|塞《ふさ》ぎ、|湿潤《しつじゅん》な舌を|執拗《しつよう》に|絡《から》ませた。ヌチュリという|粘着音《ねんちゃくおと》が車内に|響《ひび》き、|鼻腔《びくう》を彼女の甘い|香《かお》りが|満《み》たす。 「よーしよし、|偉《えら》かったねぇ。お|姉《ねえ》ちゃんが|辛《つら》かった分も|甘《あま》やかしてあげますからね~」 「あぁ心配しなくていいわよ。|防音《ぼうおん》ばっちりで運転席に伝わらないから~」  |露《あらわ》わになった|瑞々《みずみず》しい|肌《はだ》の|感触《かんしょく》が|胸《むね》に|押《お》し|付《つ》けられ、|脳内《のうない》が真っ白に|塗《ぬ》り|潰《つぶ》されていく。  |身体《からだ》が言うことを聞かない。むしろ彼女のリードに|導《みちび》かれるように、指先から力が抜け、ドロドロに|溶《と》かされるままだった。|脈動《みゃくどう》する|粘膜《ねんまく》が、|一滴《いってき》も|余《あま》さず|吸《す》い|尽《つ》くそうとするように熱くまとわりつく。視界から青い火花が消えるのと同時に、脳内に押し寄せていた|猛烈《もうれつ》な波が、ゆっくりと引いていくのを感じた。 「はぁ…ごちそうさまでした」  彼女はウェットティッシュで口周りを|拭《ふ》くと、俺の顔を見て満足そうに|微笑《ほほえ》んだ。 「そろそろ着きますよお|嬢様《じょうさま》」  |素榛《すばる》が車を|停《と》め、ドアを開く。そこは、|静謐《せいひつ》な空気が|肌《はだ》に|触《ふ》れる、|詫《わ》び|寂《さ》びの効いた古き良き|邸宅《ていたく》だった。 「こちらにどうぞ」  |華緋《はるひ》が|扉《とびら》を開け、俺は|奥《おく》の部屋に|通《とお》された。  ———  ——— 宝生院邸にて  昔ながらの|畳《たたみ》。|仄《ほの》かに|香《かお》る|陽《ひ》だまりに|照《て》らされたイ|草《ぐさ》の、青く|乾《かわ》いた|匂《にお》い。足裏で感じる|畳《たたみ》の|凹凸《でこぼこ》は|滑《なめ》らかで、毎日|丁寧《ていねい》な|手入《てい》れがされているのが、|肌越《はだご》しに|伝《つた》わってくる。|正坐《せいざ》で組もうとすると、|早七《さな》は|胡坐《あぐら》でいいと言ってくれたため足を楽にさせて|座《すわ》った。  風通しがよく|襖《ふすま》を|開《あ》けた先には、和モダンな|日本《にほん》|庭園《ていえん》が広がる。|冷《つめ》たそうな|水玉《みずたま》|模様《もよう》の|飛《と》び石、|規則《きそく》正しく|敷《し》き|詰《つ》められた|白川《しらかわ》|御影《みかげ》|砂利《じゃり》。その中心に、うねるような|威圧感《いあつかん》を持って|鎮座《ちんざ》する|三波石《さんばせき》。|素榛《すばる》が|点《た》ててくれた|抹茶《まっちゃ》の深い|苦《にが》みと|熱《あつ》さが、じんわりと|五臓六腑《ごぞうろっぷ》に染み渡る。 「さて...まずは|現状《げんじょう》知っておかなければならないことについて、情報を共有いたしますわ。|陽大《ひなた》」  呼びかけに応じ、空気がわずかに|爆《は》ぜるような|気配《けはい》と|共《とも》に|影《かげ》が|現《あらわ》れた。 「お呼びになりましたか?」 「最近の|動向《どうこう》について目立ったところはありましたか?」 「特にありません!引き続き|監視《かんし》しますっ!」  ドロンと、|煙《けむり》のような|質感《しつかん》だけを|残《のこ》して|跡形《あとかた》もなく|消《き》えた。  俺は目をまんまるにして|驚《おどろ》いていると、彼女はクスリと笑った。 「彼女はクノーでしてよ。あなたの先輩にあたる人ってところかしら」 (ふむ...同じ学校の先輩もいるのか...)  俺はふと疑問に思ったことを話した。 「|早七《さな》の|財団《ざいだん》って、俺の学校を|運営《うんえい》してるの?」 「そうよ、あの学校にあなたを入れたのも私の|手筈《てはず》なのよ」 「ってことは、あの生徒会長も?」 「えぇ、彼女は|陽大《ひなた》の妹ですね。彼女の|手腕《しゅわん》にはとても感心しているんですよ」 (全て彼女の計算通りってことか...)  俺には以前から聞きたかったことがある。 「|甘奈《あまな》は今どこにいるんだ?ここ最近見かけないんだが」  |早七《さな》の|柔《やわ》らかな|笑《え》みが|消《き》え、空気がピリリと引き|締《し》まるような|真剣《しんけん》な|面持《おもも》ちに|変《か》わった。 (まさか...)俺は|固唾《かたず》を飲んだ。 「彼女なら|無事《ぶじ》よ…今のところはね…」  俺は少しだけ安心した。 「場所は?どこなんだ?」 「それが実は分かってないの、妹さんを別の場所で|預《あず》かってて彼女ずっとうなされているのよね」  胃の|腑《ふ》を|冷《つめ》たい手で|掴《つか》まれるような、|気味《きみ》の悪い感覚。それでも彼女たちを|救《すく》わねばならないという|決意《けつい》が、|腹《はら》の|底《そこ》で|固《かた》まった。 「…それだと俺の妹の|安否《あんぴ》が心配だな…」 「それについてはご安心ください。彼女は|当家《とうけ》にも出入りできるように|許可《きょか》しましたので、いつでも|来《こ》れますよ」 「しかし…かなり|距離《きょり》があるじゃないか」 「少しだけあなたの|能力《のうりょく》を借りるわよ」  そう言うと彼女は指をパチンと鳴らした。すると、俺の|身体《からだ》から|透明《とうめい》な熱気のような「何か」が|抜《ぬ》け|出《だ》し、みるみるうちに|実体《じったい》を持って、一人の女子高生の姿として目の前に|顕現《けんげん》した。 「う、うわぁぁあああ!!!!なんだこれは!?」 「まぁそう|驚《おどろ》かないでね。彼女まだ眠ってるから。|華緋《はるひ》、彼女を起こしてあげなさい」  そう言うと|華緋《はるひ》は、そのギャルっぽい見た目の女子高生を起こしてあげた。 「んみゃぁ…まだ寝たいんだけどぉ…うちなんで起こされてんの?」  彼女は目をこすり周囲を|見渡《みわた》すと、|早七《さな》たちが|放《はな》つ|威圧感《いあつかん》に|圧倒《あっとう》され、|瞳《ひとみ》を|潤《うる》ませた。 「うぅ、うちもう帰ってもいいすか?」 「ダメですよSCP-S759、もとい|七本《ななもと》 |彩福《あやね》さん」 「うげっ、なんで私の名前知ってるし!?」  彼女は|勘弁《かんべん》してくれという顔で「|堪忍《かんにん》つかぁさい」と言いながら俺に|懇願《こんがん》してきた。いや、俺も今|初《はじ》めて知ったから|驚《おどろ》いているんだが。 「|紹介《しょうかい》しましょう、彼女は|ロード《Lord》の本体とも言える|中核《ちゅうかく》の存在ですわね」 「なんで|早七《さな》が知っているんだ…?」 「それは…」  彼女は|頬《ほほ》を|朱《しゅ》に染め、モジモジと指先を動かした。 「…|乙女《おとめ》の|秘密《ひみつ》ってことにしていただけませんかしら?」  えぇ…そんなことある?  そう思っていると|彩福《あやね》は、こちらを見て|不服《ふふく》そうに言った。 「|乙女《おとめ》の|秘密《ひみつ》を|暴《あば》こうとするだなんて最低な男っすね」 (いや、そんなこと俺に言われても困るんだが!?!?)  そんな|理不尽《りふじん》をよそ目に、|早七《さな》は話を続けた。 「実は彼女、元々は普通の女子高生だったんですけど、|誤《あやま》って能力を発動してあなたの中にずっといたんですよ」 「それであなたと|同調《どうちょう》していくうちに、あなたの能力そのものになっていったんです」 「えっとつまり…?」  俺は|彩福《あやね》を見ると、少しバツの悪そうな顔をして話した。 「えぇと…実は…『|パラサイト《parasite》 |プロトコル《protocol》』ってのを発動しちゃいまして…」 (???なんだその能力は)  |華緋《はるひ》が|解説《かいせつ》を|挟《はさ》んだ。 「つまり彼女は誰かの|同意《どうい》を|経《へ》ることなく、|宿主《やどぬし》に|寄生《きせい》して|栄養分《えいようぶん》を|吸《す》い|続《つづ》けることに|特化《とっか》した能力の持ち主です」 「えーっとつまり…|居候《いそうろう》?」  俺は|彩福《あやね》を見ると、どこからともなく取り出した|鳩《はと》のお|菓子《かし》を|投《な》げつけてきた。 「誰があんたの|寄生虫《きせいちゅう》ですか!!!ウチだって役に立ってたし!!!」  ポカポカと、|猫《ねこ》のパンチのような|感触《かんしょく》で|殴《なぐ》ってくる|彩福《あやね》を|宥《なだ》めるべく、|早七《さな》に|目配《めくば》せすると|鶴《つる》の|一声《ひとこえ》を|放《はな》った。 「|彩福《あやね》さん、彼の妹をここに連れてこられますか?」 「えぇ…めんどっちぃし…」 「今ならこのお|屋敷《やしき》でゲームやお|菓子《かし》|三昧《ざんまい》で|過《す》ごせるように、|手配《てはい》してもよろしくてよ」 「やります!!やりますっ!!いえ、ぜひやらせてくださいっ!!」 「ふふ、|聞《き》き|分《わ》けの|良《よ》い子ですわね」  |現金《げんきん》なやつだ。|尻尾《しっぽ》を|振《ふ》る子犬のように|従順《じゅうじゅん》になった。 「はぁ…俺が主人なんだけどな」  そう言うと|彩福《あやね》は口を|尖《とが》らせキャンキャン|吠《ほ》え始めた。 「うるさい!|都合《つごう》のいい時だけ|呼《よ》び|出《だ》す|奴《やつ》とは|大違《おおちが》いなんだよ!」 「では|早速《さっそく》やっていただけるかしら」 「もちろんです|姉御《あねご》!!!」 「|早七《さな》と|呼《よ》んでも|構《かま》いませんわよ」 (まったく、これじゃあどっちが主人なんだか…)  彼女は|ロード《Lord》の力を使い、|時空間《じくうかん》を|繋《つな》げ|始《はじ》めると|歪《ゆが》んだ|扉《とびら》が|出現《しゅつげん》した。  ぬるりと人の|肌《はだ》が見えたと思ったその時、|確《たし》かに俺の妹の|姿《すがた》が見え始めた。 「…!!|未夏《みか》!!」  俺はその手を|掴《つか》んだ。|手繰《たぐ》り|寄《よ》せた彼女の|身体《からだ》から、|懐《なつ》かしく|確《たし》かな|体温《たいおん》が|伝《つた》わってくる。 「…お兄ちゃん…?」 「俺だよ、|未夏《みか》。|待《ま》たせてすまない」  俺はそう言うと|未夏《みか》を|抱《だ》きしめると、|未夏《みか》はボロボロと|泣《な》き始めた。 「|昨日《きのう》|夕方《ゆうがた》|戻《もど》らなかったの、ホントに|心配《しんぱい》したんだからね!!!バカッ!!バカお兄ちゃん!!」  |胸《むね》に|響《ひび》く、彼女の|小《ちい》さな|拳《こぶし》の|痛烈《つうれつ》な|衝撃《しょうげき》。俺は彼女が|泣《な》き|止《や》むまで、その|重《おも》みをしっかりと|受《う》け|止《と》めた。 「ほーん?これはもう出来ちゃってるって感じ?」  |彩福《あやね》がそう言って俺たちをからかった。少し|驚《おどろ》いた顔で|未夏《みか》が|振《ふ》り|返《かえ》ると俺に聞いてきた。 「お兄ちゃん、この人たち誰?」 「えっと…話せば色々長くなるんだけど。こっちが俺の姉の|早七《さな》。こっちは…」  俺が言い|終《お》わらないうちに|彩福《あやね》は|割《わ》り|込《こ》んできた。 「どうも~彼んとこに|居候《いそうろう》してた|彩福《あやね》って言いま~す。これからよろしくね!|未夏《みか》ちゃん!」 (あ、やべこれは怒られるやつだ) 「お兄ちゃん…これってどういうつもり???」 「えっと、これには深いわけがあってだな…」  |未夏《みか》の手が、俺の|頬《ほほ》を|鋭《するど》くビンタした。パァンと|乾《かわ》いた|音《おと》が|響《ひび》き、|熱《あつ》い|痛《いた》みが|走《はし》る。 「お兄ちゃんのバカッ!!!!」 (はぁ、心配してくれるのは|嬉《うれ》しいんだが、もう少し手心ってやつをだな…)  俺は何も|言《い》い|返《かえ》さず、彼女の|怒《いか》りが|鎮《しず》むのを|待《ま》つしかなかった。  ———  ——— しばらくして 「えっとつまり|彩福《あやね》さんは、お兄ちゃんの中にずっといたってわけ?」 「まぁそうなるっしょ!あぁ|大丈夫《だいじょうぶ》!!あんたの|恥《は》ずかしい|姿《すがた》は見てないからねっ!!」  |未夏《みか》は顔を|真《ま》っ|赤《か》にし、|熱《ねつ》が出たように目を回して|体育《たいいく》|座《ずわ》りで顔を|伏《ふ》せた。 「うぅ…穴があったら入りたいよ…」  俺はそんな妹の|肩《かた》をさすった。 「俺はもう気にしてないから…な?」 「…でも私が一番|納得《なっとく》してないし…」  |未夏《みか》は|悶々《もんもん》としていた。 「それでは|早速《さっそく》だけど、|素榛《すばる》、|彩福《あやね》。こちらにいらして」  |早七《さな》は|別室《べっしつ》に俺たちを|招《まね》き|入《い》れた。 「|華緋《はるひ》、弟君の妹をお願いね」 「|仰《おお》せのままにお|嬢様《じょうさま》」  俺たちは|廊下《ろうか》を出て|通路《つうろ》を|突《つ》き|進《すす》む。 「えっと、なんでうちが|呼《よ》ばれたし」 「あなたがいないと話にならないからですわよ」 「ちぇ…ゲーム|三昧《ざんまい》で毎日過ごせるかと思ったのに」 「何か文句でも?」 「い、いえ!!全くございませんっ!!」 「|素榛《すばる》、あなたは入り口を守ってくださいな」 「|承知《しょうち》いたしました」  |早七《さな》が俺たちを|招《まね》き|入《い》れたのは、|装飾《そうしょく》を|削《そ》ぎ|落《お》とした、|静謐《せいひつ》で|狭《せま》い和室だった。 「えぇと、こういうのって|詫《わ》び|寂《さ》びってやつ?」 「そうね。ここには最低限しか置かないですから」 「座布団はご自分で持っていらしてよ」  |早七《さな》が|持《も》ち|出《だ》した|座布団《ざぶとん》のところから|彩福《あやね》の|分《ぶん》までとり彼女に渡した。  使い|込《こ》まれた|布《ぬの》の|感触《かんしょく》を|指《ゆび》に感じながら、俺たちは|机《つくえ》も置かれていない|畳《たたみ》の上で|向《む》かい合った。 「これで|一安心《ひとあんしん》ですわね」 「ふと|疑問《ぎもん》に思ったんだけどさ」 「なんでしょうか」 「俺たちを恐れているのなら、なんで|殲滅《せんめつ》をせずに|監視《かんし》なんかしてるんだろう」 「それにはSCPの|生態《せいたい》が|関《かか》わっています」  彼女は、|重《おも》い|真実《しんじつ》を一つ一つ置くように|語《かた》り始めた。

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