エナジーコット(@EnergyCotton) / 第6話

第6話 魔術の基礎訓練(3歳)

 魔術を発動した後、カークに部屋に戻るよう言われ、送り届けられた後にカークは祖父と父に報告に向かった。  それにしても魔術の入門書を返していないことにも気づかずそのまま行ってしまったのだから、よほど慌てていたのかもしれない。  まだすべて読み終わっているわけでもないため、部屋で入門書を読みながら待っていよう。 魔術を使わなければ問題はないはずだ。 (しかし読んでると不思議だな、術式の長さとさっきの詠唱の長さが釣り合ってない。詠唱のほうが圧倒的に短い気がする)  そう疑問に思い読み進めていると答えはあった。  どうやら術式を詠唱する際に別の言語に変換して短くしているようだ。例えば先ほど使った初級の水術。術式は文字数だけなら200文字ぐらいある。  しかし術式を詠唱の言葉に変換するとこんな感じになるようだ。 【水の精霊よ】=魔力を水属性に変換する術式。 【我が魔力を糧に】=魔力を術式に流す術式 【潤いを与え給え】=発動魔術を確定させる術式 【クリエイトウォーター】=確定させた魔術を実際に発動させる術式  そして中級以上から詠唱の難易度が上がってくる。  極論を言えば魔力と適性あとカンペさえあれば今の時点で神級魔術でも発動ができるというわけだ。  ただその詠唱を知る人と、それだけの魔力を保有している人がほとんどいないから無理みたいだが。  入門書を半分ぐらいまで読んだ頃にカークが戻ってきた。 「坊ちゃま、失礼します」 「カーク、どうだった?」 「はい、セドリック様もエドワード様も喜んでおられました。その上で明日から魔術の訓練をしていいとのことです。その際は私が必ず傍にいるようにとも仰ってました」 「ありがとうカーク!明日から頑張るね!」 「はい、では私は明日の準備がございます。そちらの本も私が戻しておきますのでお渡しいただけますか?」  どうやらカークは入門書をそのままにしてしまっていたことに気づいたようだ。  まだ読みたかったがここでゴネても仕方がないので素直に返すことにした。 「はい、じゃあ明日からお願いね!」 「はい、こちらこそよろしくお願いします坊ちゃま。それでは失礼します」  そう言い残してカークは去っていった。  あとは日課の魔力操作の訓練をして今日は終わろうと考えた。 (魔術を発動させなきゃいいよね。いつもやってたことだし)  そうしてその日を終えた。  ----------  次の日 「おはようございます坊ちゃま……。すでに準備できているご様子ですね」 「楽しみだったからね」 そういって庭に出ると、肘掛けが高めの低い椅子に座らされ、目の前の子供用の机に入門書を開くように言われた。 サミュエルは不思議そうにしているとカークが説明を始める。 「訓練なのになんで椅子に座って本を広げてるのか、不思議に思っているようですね」 「うん。なんで?」 あくまで子供らしく振る舞う。 「坊ちゃまはまだ魔術を使い始めたばかりです。いつ魔力切れで倒れるかわかりません。ですので、いつ気を失っても大丈夫なように椅子に座ってもらいました。これなら気を失っても支えるのが遅れても机に頭を打つぐらいです。それでも本があるので怪我をすることはありません」 それもどうかと思ったが黙って聞いておくことにした。 「それと坊ちゃまはなにができるか試して頂く必要があります。こちらで用意した詠唱を一通り試していただきます」 そう言われ一枚の紙が渡された。そこには文字が4行書かれていた。 「これは?」 「土、風、光、闇それぞれの初級魔術の詠唱文でございます。どれが使えてどれが使えないかの確認となります。水は昨日見させていただいたので必要ありません。火に関しては危険ですので、旦那様から許可が出るまで禁止と言いつけられております」 なるほど、とサミュエルは内心で納得する。 「なにか気になることがあれば仰ってください」 「ううん、ないよ」 「かしこまりました。では上から順に試してみてください」 カークがそう言うとサミュエルは順番に試し始めた。 ---------- 一通り詠唱で確認を終えた結果、土と風は発動できたが、光と闇は発動できなかった。 その結果にカークは内心で光と闇の適性がなくてよかったことに安堵していた。 セドリックたちの心配事が一つ消えたからだ。 「終わったよ。2つは出なくて残念だったなー」 サミュエルはまたも敢えて子供らしく振る舞う。 その実は使えたらよかったな程度で残念には特に思っていない。 「お疲れ様です。火は試しておりませんがおそらくこれなら基本の4属性は問題なく使えそうですね。光と闇の魔術が出なくても十分凄いことでございます。自信をもってください」 「そうなんだ。ありがとう」 サミュエルは慰めてくれたことに感謝の言葉をする。子供らしくない発言だが彼はそのことに気づいていない。 「ところで魔力のほうはどうでしょうか?」 「なんだかまだまだ平気そう」 「承知しました。では風の初級魔術を繰り返してください。体がなにかおかしいと思ったら教えてください。魔力切れが近い可能性があるので、そこで止めてもらって構いません」 「わかったよ。でも魔力切れってわかるの?」 「聞いた話では体が重く感じてくるとのことです。ただ多くの者はそれすらわからず魔力切れを起こすため使用回数や使った魔術の感覚で魔力切れが近いかどうか判断しているようです」 話からしておそらく魔力量を測るためにやらせるのだろう。 いまの自分の魔力量は訓練の甲斐があってそこそこ多いと自負している。 そのため頃合いをみて止めると申告しようと考えた。 しかし他の人は心臓の辺りに感じる魔力がわからないのだろうか。 いまでもこうしてつかっていると少しずつなにかが減っていく感覚がある。 あまりやりすぎると不自然だと思い、10回目で申告することにした。 「お疲れ様です。魔力の量が多いようですね。坊ちゃまのご年齢でこの回数はなかなかおりません」 「そうなの?」 「ええ。そうです。旦那様に仕える従士の中に魔術を使える者がおりますが、その者でも初級魔術は30回ほどと伺っております。そう考えると坊ちゃまのご年齢でこれは多いと言えます。素晴らしいですね」 やりすぎたか?と一瞬思ったがカークの反応から許容範囲だということが伺える。 「この本に使えば使うだけ増えるってあったよ。じゃあこれからもたくさん使って増やすね!」 「はい、それでよろしいかと。でも今日はお疲れでしょうからここまでにいたしましょう」 「うん、わかった」 そう言って、本日の魔術の訓練は終了した。 サミュエルはあとはバレないように日課になっている訓練をしておこうと考えた。

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