エナジーコット(@EnergyCotton) / 第18話

第18話 試練の始まり(5歳)

 とうとう叔母たちが到着する日がやってきてしまった。  姉と兄はああ言ってくれたがサミュエルはやはり不安だった。  幸いまだ子どもで健康体なので大丈夫だが、前世の俺なら胃が痛くなっていただろう。  そしてエノー家の馬車が屋敷に到着し、祖父と父が出迎え、応接間に案内した。  そこで祖父と父以外の家族が3人を出迎える。 「お母様、レベッカさんお久しぶりです。ミシェルにマイケルも元気そうね」  再会の挨拶を交わす。 「そちらがサミュエルね。初めまして。あなたのお父様の姉、ナタリーよ」 「は、はじめまして」 「あら?人見知りする子かしら?昔のエドワードみたいね」  ナタリーはエドワードの幼い頃を引っ張り出し、ホホホと笑う。 「姉上……勘弁してください」  苦笑いするエドワードに対し、ナタリーは冗談よと返し、自分の子どもたちを紹介する。 「こちらがヘンリーとギルバートよ。一番上の息子は留守番で今日は来てないわ」 「ヴァロワール家の皆様お久しぶりです。サミュエル君は初めましてだね。ヘンリー・エノーです」 「ギルバート・エノーです!初めまして!」  ヘンリーは丁寧に、ギルバートは元気にそれぞれ挨拶をした。  それに返す形でヴァロワール家の面々も自己紹介を終える。 「挨拶も終わったことだし、あとは子どもたちで遊んでなさい。ただしミシェルは残るようにな」  セドリックがそう指示を出すと、ミシェル以外の子どもたちが別室に移動する。 「なあマイケル、俺のこと覚えてるか?」 「覚えてます。剣の振り方教えてもらいました」 「そうそう、あれから上達したか?」 「毎日訓練してます。いまも大人の兵士と一緒に訓練させてもらったりしてます」 「まだ9歳だろ?凄いな!ならちょっと見せてくれよ。俺も相手にするからさ!」 「え?でもそれは……」  マイケルはサミュエルに視線を移す。弟のフォローをするつもりだったのでここで離れるわけにはいかないと考えた。 「大丈夫だって。別に試合をしようってわけじゃないからさ!ほらいくぞ。ギルバート、サミュエル。またあとでな!」 「ちょ、ま、待ってください!サミュエルごめん!」  マイケルはヘンリーに腕を引かれ、頼もしい兄は早くも退場していった。 (すでに孤立無援……どうしよう……)  状況から緊張しているサミュエルにギルバートは声をかける。 「サミュエル君、でいいかな?僕はこの屋敷が初めてだから案内してよ」  ギルバートからの提案。話で場を保たせることができないサミュエルにはありがたい提案だった。 「わかりました。では付いてきてください」  そう言って、ギルバートと共に部屋を出た。 「こっちは食堂です」  サミュエルはギルバートの前を歩きながら、部屋の名前を告げる。 「こっちは調理場です」 「……」 「こっちは手洗い場です」 「……」 「こっちは客室です」 「……」 「こっちは」 「待って。それぞれの部屋でのちょっとした話とかはないの?」 (なにを言ってるんだ?この子は?)  部屋は部屋でしかなく、部屋の名前を言えば普通なにをする部屋かわかれば十分だろう。  それなのにギルバートはその部屋についてなにかを話せと言ってきた。 「えーっと……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「わかった。次を案内して」 「あ、はい。ではこっち……」  特になにも話してないが勝手に納得してくれたとサミュエルは判断した。 「以上です」  一通り部屋を案内し終えたが体感で5分も経っていない。  また場が保たなくなるなと思った矢先にギルバートが質問してくる。 「あそこの部屋はまだ聞いてないぞ。なにがあるんだ?」  それはこの屋敷の隅に作られた、サミュエルのための工作部屋だった。 「工作部屋……です」 「工作部屋?なんのために?」 「僕が魔術具を分解したり、調べたり、修理したりする場所です」  質問に対する説明だけなら問題なくできることにサミュエルは少し安堵した。 「え?魔術具を修理?君が?」 「はい」 「本当に?」 「はい」  ギルバートはサミュエルを疑いの目でみてきた。  胡散臭く思われていることにサミュエルも気づいた。 (そうだよな。5歳の子どもが魔術具を好き勝手弄って修理したなんて、誰が聞いても奇妙な子どもと思うよな。)  サミュエルは5歳児が修理できる技術を持ってることではなく、そんなことをしている子どもがおかしいと思われていると考えた。 「じゃあ見せてよ」 「え?」 「直したというのを見せて。それなら信じてあげる」 「駄目……です。カーク……僕の教育係が傍にいないときにあの部屋を使ってはいけないと言われているので」  サミュエルは本当は少し違うがまあ似たようなものだろうと思い、子どもたちだけでは駄目だと断りを入れた。 「ならその教育係を呼んで来てもらえばいいね。直したというものを見たい!」 「う……わかりました……」  本来なら従う必要はないのだが、接待役としての責任感からカークを呼んできてしまう。  カークもやれやれと思いながらサミュエルの指示に従い、工作室の中に同行することとなった。 「おー、本当にいろんな魔術具があるんだ!」 「じゃあ修理したのどれ?」 「これです」  そうなるとは思っていた。  事前にカークにこうなることは話しておいたのでランプ型の照明具を手に取る。 「じゃあ使えるの?見せてよ!」 「では、いきますよ」 「え?うわ!ほんとだ光った!君!魔術使えたんだ!?」 「はい。じゃないとちゃんと直せたかどうかわかりませんから」 「じゃあさ。次は直しているところ見せてよ」  サミュエルが魔術具を直したと言ってるのだからそれを見せてほしいというのは当然の要求だった。 「いえ、見せるのはいいのですが……結構時間がかかりますよ?たぶん待ってる時間面白くないと思います」 「別にいいよ。僕は君がどうやって直すのか見たいから」  サミュエルはカークに視線を移す。  諦めたようにゆっくりと頷いていた。 「わかりました。でも途中で邪魔したりしないでくださいね。あとカークの言う事はきいてください」 「わかった!」  ギルバートが返事をするとサミュエルは修理の準備をした。照明具で修理が簡単そうなやつは面白くないから後回しにしてたのがあったので、それの修理をすることにした。  そして修理に取り掛かる。すでにどこが悪いのかわかっている魔術具なだけにサミュエルの動きに迷いはない。  そして半刻が過ぎた頃、修理が終わった。 「終わりました。では使ってみましょう。アレンは……もう呼んできてるね。じゃあアレン頼んだよ」 「承知しました」 「あれ?君が使わないの?」 「修理したばかりの魔術具は、なにが起きるかわからないから。アレンが最初に庭で使う約束なんです」 「ふーん。じゃあ庭に行けばいいんだね」  そうして4人で庭に出る。するとマイケルとヘンリーが居た。 「あれ?二人とも……ああ、魔術具を使うのか」 「魔術具?」  ヘンリーが納得するマイケルに意味がわからず聞き返す。それに対してマイケルがヘンリーに簡単に説明をした。 「えー?本当なのかよ?」 「はい、僕がサミュエル君が修理するところを見てました。それでこれからちゃんと動くか確認するみたいです」 「じゃあ俺にも使えるところを見せてくれよ!」  そうして4人は物陰に隠れて魔術具の発動を待つ。  そして問題がないと合図が出た。 「ほんとだ光ってる!」 「サミュエル君……凄いね!あと疑ってごめん!」 「そうだろ、サミュエルは凄いんだよ」  驚くヘンリーに、疑ったことを謝罪するギルバート。そしてなぜかマイケルが自慢をした。  そうしてその日は終わりを迎えた。

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