エナジーコット(@EnergyCotton) / 第206話

第43話 実験準備(7歳)

 堆肥作りはひとまず完成した。次にやることと言えば、畑で効果の検証が必要だ。  魔物素材入りの堆肥に効果があるのか。土地に不具合がでないかを検証する必要がある。それで問題がなければ魔物素材を利用した堆肥への忌避感も薄れるだろう。 「というわけで、あなたに協力してもらいたいんです。領主であるお祖父様からも許可は貰ってるから畑作りと手入れを手伝ってほしい」  サミュエルは農業の話は聞いたことはあっても、農業はやったことはない。ならば専門家に手伝ってもらうのがいいだろうと判断した。 「サミュエル様がそう言うのなら従います。私は何をすればいいんで?」  トムの父親に協力を要請した。土が痩せてきているのを知っており、自分とも既知の相手の農家は彼しか知らないからというのはある。そして実験するのならばすでに土地が痩せているとわかっている土地がいい。 「今回は作った堆肥がどれだけ効果があるのか見るのが目的です。だから土地が痩せているほうがいいです。まだ回復しきっていない休耕地があればそこに作物を植えられるようにしてください」 「ですが私たちも普段の仕事があるので追加で畑ができるかどうか……」 「そこは小さくて大丈夫です。堆肥は少しあるだけなのでこれから堆肥を増やして試します。堆肥が完成するまでに畑を整備してもらえれば大丈夫です。あと3つの区画を用意してほしいんだ」  大体1区画辺りのサイズを口頭で伝えると、それなら空いた時間にやれば1日1区画ぐらいなら作れると返事を貰った。 「ちなみに、この時期は何を育てる予定なんですか?」 「もう夏が終わります。しばらくしたら麦を収穫し、空いた土地でカブを育てる予定です。これなら大体2ヶ月足らずで収穫できるようになるので冬には間に合います。だからこの時期から植えるにはちょうどいいんです」 「わかった。じゃあ僕の方の畑にも同じ日にカブを植えるね。それまでに堆肥も用意するから畑は頼んだよ。報酬は出すからさ」 「わかりました。それまでに植えられるようにしておきます」  そしてサミュエルは大事なことを最後に伝える。 「あと、魔術具を運び入れるから空いてる納屋や小屋があれば使わせてほしいんだけどあるかな?」 「それなら休耕地の傍に休憩で使う小屋があります。今は休耕地なので使っていません」 「じゃあそこを使わせてもらうね。僕は他にもやることがあるからあとはよろしくね」  そう言ってサミュエルは衛兵の駐屯地へ向かった。  ---------- 「守備隊長はいますか?」 「はい!呼んできます!」  駐屯地の入口前に居た衛兵に守備隊長がいるか確認をするとすぐに呼びに向かった。  しばらくすると慌てて守備隊長がやってくる。 「サミュエル様。本日はどのようなご用件でしょうか」 「魔石の納入いつもありがとう」 「いえ!我々衛兵一同!お力添えできること嬉しく思います!」  彼らが駆除や街道の巡回をし、魔石を集めてくれているから町の外の治安も安定し、自分も魔術具を弄りくり回せているため始めにその感謝を伝えた。 「今日はそれとは別にお願いしたいことがあって……。魔物を倒したら埋めずに町までもってきてほしいんだ」 「え?魔物の死体を、ですか?」 「うん。ちょっと実験で使いたくて。運んでくれた魔物の死体の量に応じて報酬も出すから頼めるかな?あ、魔物の死体ならゴブリンでもコボルトでもなんでもいいからね」 「それなら問題はありませんが……どちらに持っていけばよろしいので?」 「畑がある西側に休耕地があるよね?あそこにお願い」  魔物の死体を運び入れる場所を指示する。 「わかりました。いつ頃から運びいれればいいのでしょうか?」 「できるなら明日か明後日に1日だけ集中的にお願い。ただ全部じゃなくていいからね。持ち運べる量だけ運んでくれればいいよ。もし実験が上手くいったら今後定期的に運んでもらうようになるかもしれないけどね」  そうして魔物素材の確保を衛兵たちに依頼することになった。  ----------  翌日には実験予定地に破砕魔術具を運び入れ、大型化した発熱と時間加速の魔術具も用意した。  ちょうど衛兵たちが魔物の死体を運び込んでくれたため、早速作業に取り掛かる。  用意するのは3パターン。  一番区画は通常堆肥。  二番区画は魔物素材入り。  三番区画はさらに魔物素材を増量したもの。  三番区画のものは二番区画より多く魔物素材を使うと作物の差がでるのかの実験だ。  堆肥になるまでに10日はかかるが、堆肥になってしまえばあとは外に置いておけるため作り置きできるのがいい。  その日の内に持ってきてもらった魔物素材を破砕していく。  一度に3区画分の堆肥を作るため掛かりっきりになってしまった。  破砕してる傍から更に魔物の死体が運ばれて来たため、とりあえず死体はもういいよと通達してもらうことにした。  三番区画用の堆肥まで作ったが、それでも追加分が運ばれたため魔物素材はまだ余っている。このまま腐らせるわけにもいかないのでこれも二番区画と同じ堆肥にしてしまおうと思い、運んできた衛兵にはそのまま破砕魔術具に入れてもらうことにした。  そして破砕魔術具を動かしていると今までとはガキンといった骨とは違う、硬いものを砕いた音がした。 「え?いまのなに?」  すでに動かしているため止められない。そして4回ほど同じ異音がしたあと排出された堆肥を見る。見た目は二番区画の堆肥と変わりなかった。 「最後に運び込んだ死体ってただのゴブリンだったよね?なにが違ったんだろう?」  運び込んできた衛兵はまだ残っていた。投げ入れたあと、なにをやってるのか見てから帰ろうとしたがサミュエルの反応から帰るタイミングを逃してしまったらしい。 「えっと……サミュエル様よろしいでしょうか?」 「なに?」 「私たちが持ってきたゴブリンは普通のゴブリンですが、駆除任務ではなく町の入口近くまで出てきたゴブリンです。なので我々で倒してそのまま持ってきました」 「出る場所でゴブリンが変わるってことなの?」 「いえ、そうではなく……魔石を回収していません。駆除任務とは違って倒した証拠が要らないので……。大体いつもそのまま燃やしてしまいます」 「ということは、砕けたような音は魔石の音だったってこと?」 「はい、違いがあるとすればそれぐらいかと思います……すみません」  魔石の粉末が混ざった堆肥の材料が作られたということにサミュエルは気づいた。 「いや、それはいいよ。僕もそれにはなにも言ってなかったしね。こっちこそごめんね」 (これどうしようかな……勿体ないしそのまま使うか。元々魔物の中にあったものだし、土にも鉱物が含まれているんだから問題ないよね。それにせっかくなら差があるかも見たいし)  そう思い、急遽第四区画も追加することにした。後でトムの父親に頼んで畑を一つ増やしてもらおう。  -----------  それから10日後、4種類の堆肥が完成した。  トムの父親に手伝ってもらい、堆肥を畑に撒き耕していく。すぐに種まきをするのではなく、堆肥は撒いてから1週間以上は置く必要があると言われた。  トムの父親の畑でもまだ収穫が終わっていないため、カブの種まきは2週間後になるとのことだ。それに合わせて自分たちも種まきをすることにし、最近は改良照明具の受注依頼も減ってきたため、その間に破砕魔術具や発酵用の魔術具を改良しておこうと考えた。

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