りんたろ / 第10話

10 対 魔法

僕たちはダンジョンの40階に挑んでいる。 部屋に明かりが灯っていく。 複数の影が見える。 ――3体のワイトキングだ。 魔法を操るアンデッド。 今まで対峙したことのない魔法戦だ。 それも3体同時。 「気を付けてください。ワイトキングは火属性の魔法を操ります」 キキラが教えてくれる。 それと同時にワイトキングたちは杖を掲げた。 火の玉が先端に宿り、放たれる。 「ファイアボールだ!」 とっさに後方に飛びのく。 僕らの前方に着弾し、爆発して炎をまき散らす。 危なかった。 これは非常に厄介だ。 直撃したらと思うと怖気が走る。 「次が来るわよ!」 僕らは、リリス、僕、キキラの順に陣形を整える。 ファイアボールが迫りくる。 リリスは妖刀を抜いた。 「スキル・居合い斬り!」 ファイアボールが切り裂かれる。 魔法対策をしておいてよかった。 残り火を僕が盾で防ぐ。 キキラが軽い火傷をヒールで治す。 とりあえずしのぎ方はわかった。 ここからは攻撃開始だ。 まずは小手調べ。 「グレネード!」 ワイトキングたちの中心に投げ込む。 爆発し1体が吹き飛んだ。 すかさず銃弾を撃ち込む。 胴体に数か所風穴が開く。 「スキル・刺突!」 動きの止まった奴にリリスがとどめの一撃を与える。 これで残り2体だ。 ≫ ワイトキングが詠唱を始めた。 嫌な予感がする。 「リリス、早めに決着をつけよう。さっきの要領でいくよ!」 「わかったわ!」 「グレネード!」 ワイトキングたちは後ろに飛び爆発をかわす。 さすがに同じ手は通じないか。 そして詠唱が終わる。 眼前に炎の壁が現れた。 「なにこれ!これじゃ近づけない」 ワイトキングはニヤリと笑い、ファイアボールを放ってくる。 再び先ほどの陣形に戻りやり過ごす。 これはまずい。 消耗戦になってしまう。 ワイトキングの魔法がいつまで続くかわからない以上、こちらのスキルポイントがもつか心配だ。 特にリリスは妖刀を振るう度にスキルポイントを吸われていく。 何か突破口を見つけなければ... 「スキル・円陣斬!」 リリスが2つのファイアボールをかき消す。 「スキル・ヒール」 キキラが火傷を癒す。 ワイトキングのファイアボールの勢いはとどまるところを知らない。 防戦一方だ。 何か、何か突破策を。 必死に思考をめぐらす。 炎の壁は高く、飛び越えることはできそうにない。 飛び込んで突っ切るには壁がぶ厚すぎる。 通り抜けるころには火傷だらけで動けなくなるだろう。 こちらの手札は魔法の切り裂けるリリスの妖刀。 キキラのヒール。 そして僕。 照準を定めて銃を撃つ。 炎の壁で弾の勢いが弱まり、ワイトキングに大したダメージを与えられない。 この距離ではグレネードは奴らに届かない。 手詰まりか... こんなところで全滅するわけにはいかない。 撤退も視野に入れる。 「グレネード!」 悔し紛れに投擲する。 炎の壁に阻まれ、奴らに届くことなく爆発する。 爆風によって炎の壁が一瞬ゆらめいた。 これだ! 「リリス、キキラ、これから僕の指示に従って。 僕はこれから特攻をかける。リリスは僕のすぐ後ろについてきて。 キキラはヒールの待機を」 「わかったけど、突っ込んだところであの壁をどうするの?」 「僕に考えがある」 ≫ 僕とリリスが走り出す。 キキラは距離を取りつつ、すぐに回復できる位置取りをする。 炎の壁が近づく。 まだだ。 もう少し近くへ。 手持ちのグレネードはあと3つ。 それを全て、距離を変えて投擲する。 ――爆発。 炎の壁が薄くなる。 線上に抜け道が生まれる。 「リリス、今だ!」 「オッケー!スキル・円陣斬!」 妖刀の一撃で炎の壁がさらに拡散する。 「リリス、僕にぴったりくっついて!」 盾を壁にしながら疾走する。 「リリス!」 声をかけると、意図をくみ取ったリリスが僕を踏み台にし飛び跳ねた。 「スキル・刺突!」 リリスの体が一気に前に加速する。 あっという間に炎の壁を突破した。 僕は炎に巻かれたまま最後の仕事をする。 「リリス、目をつむれ!スタングレネード!」 強烈な閃光と爆音。 ワイトキングたちは視覚と聴覚を奪われ、おろおろしている。 そこからは一瞬だった。 「スキル・剣舞!」 ワイトキングのうち1体がリリスの一閃に切り裂かれた。 もう1体が杖の先に火の玉を作る。 だがもう遅い。 リリスが杖を切り落とし、ワイトキングを袈裟懸けに斬った。 勝った。 炎の壁が消える。 ≫ 「キョウ!」 リリスが駆け寄ってくる。 「動かないでください。スキル・ヒール!」 キキラが唱える。 自分の身体を見る。 大火傷だ。 思わず目をそむけたくなるが、覚悟の上の傷だ。 「これは私のヒールだけでは治りません。急いで街の病院へ参りましょう」 リリスが僕のそばに寄ってくる。 「キョウがスキルを使えない中で、自分のできることを一生懸命探してることはわかってる。 だけどこんな戦い方は二度としないで! 自分を犠牲にしないで...」 リリスが涙ぐんでいる。 キキラがそっと抱きしめる。 「キョウさん、私たちはパーティーです。 一人でできないことはみんなでカバーする。 それがパーティーです。 私たちを信じて、今後はあまり無理をなさらずに」 「ごめん、今回は無理をしすぎた。 しばらく魔法は見たくないな。当分夢に出てきそうだ」 リリスとキキラがクスッと笑った。 二人に担がれながらようやく安堵する。 転移陣が起動し、ダンジョンから街へ戻る。

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