人生平坦道 / 第25話

サキュバスじゃん

 セラの部屋にルナも加わり三人が集まる。ただその場の空気は冷え切っておりとても女三人寄れば姦しいといった様子は無かった。 「うぅ……私が悪いんじゃないんです……こんな社会を築いてしまった世界が悪いんです」 「けどどうするんだ? 働き口を探すにしてもまずその不器用さをだなぁ……」  不器用で言い表していいのかは分からないがとりあえず心配をする。心配する風を装う。正直面倒というかどうでもいいというか……、連れてきたのは私たちかも知れないが正直これからの事を心配する程の仲でもないしなぁ……、そうこう考えているとセラが口を開く。 「まぁ働き口が無いなら体で払えばいいじゃない」 「「なっ⁉」」  体で支払う……それはつまり金銭や物が無い為支払うものが無く自身の身体を使って代価を支払うという事、薄汚い豚のように肥え太った貴族相手に跪いて要求に従う……、それがいかなる用件であっても拒否する権限は無く顔を歪ませてでも応じるのだ。  こいつ……こんなか弱い女の子(自分の百五十歳以上年上だが)になんてひどいことを……。私の想像を遥か上を行くこの女には時々感服する。  私はこう見えても王国の姫であるので体を支払うという発想が無かった。私の場合どうすれば体で支払うことが出来るのだろうか……。  この国が一度滅ぶか革命が起きればいいのか? だがそうなれば首を切り落とされてしまうか……うぅむ悩ましい。 「無理ですぅ、そんなの出来ましぇん、うぇえええん。」 「いいぞルナその意気だ、やはり嫌々奉公する方が興奮するからな……。だがいきなり泣くより最初はムスッと抵抗する様を見せていた方がいいんじゃないか? こう線が切れた時にブワっと……いやでも待てよ、最初から従順の方がウケがいいかも知れん、ほう良く調教が行き届いているな……的な。そうと決まれば首輪を買いに行くか、なに奢ってやる。就職祝いの前払いだ」  それでは行くか! そう言おうとした私の体がセラに蹴り飛ばされた事により真横に吹き飛び、ガラガラガラと壁が唸りをあげたがその事に2人は一切触れない。 「一体何言ってんのよあんたは。そうじゃなくて冒険者として稼げばいいでしょってことよ」 「それなら私自信あります、エルノアでも一番の魔法使いでしたし、やっちゃいますよ! どんな敵でもワンパンですっ!」  壁にめり込んだ私の前でビシッビシッっとシャドーボクシングをするルナ。  自分の事になると周り一切見えなくなるね君、まあ別にいいけど……。 「ということでよろしくお願いしますアネットさん!」 「う~ん……まぁいいか」  実際問題パーティが増えることに関してはありがたかった、単純に人数が増えることで戦略も取れる、それに魔法という遠距離から援護してくれるのは心強いしな。とはいえこの子に背中を預けて大丈夫なのだろうか、実力もよく分かっていないし……不安だ。   仲間も加入した事だしさっそく集会場に行きますかね……そう思い立ち上がろうとした際に扉からコンコンとノックがした。その先に現れたのはベオウルフであり、おどおどとした様子で口を開く。 「セ、セラ様、お客様がお見えです、何でも会えば分かるとのことで……」 「あら何かしら?」  そう言って部屋を出ていくセラを追うように私達も後ろを付いていく。  汗を拭うベオウルフに息災かと伺うと 「ええ何不自由なく過ごしております。これもアネット様とセラ様のおかげでございます」 「それは良か――「私は?ねぇ私は?」――司教もお前のことはすごく買――「私のおかげでもあるよね?」――ええい鬱陶しい!」  ピョンピョンと跳ねるルナを払い除ける、お前は何もしとらんだろが……。 「勿論ルナ様のおかげでもございますよ。」  とフォローを入れるベオウルフにルナはいっひっひと笑う。単純だなぁこいつは……。  教会の聖堂前でようやくセラに追いつく。セラともう一人の女性の会話が聞こえてきた。 「あらベルじゃない、久しぶりねぇ最近来てなかったんじゃない?」 「そうねぇ、まぁ色々あってね。」  目の前に現れた女性は薄いピンクの髪に耳の上辺りから山羊のように優美な黒い角が左右から生えていた。赤い瞳と黒い瞳孔は誘惑や色気だけではない、どこか冷たい知性と、獲物を見定める狩人の目をしている。艶やかな赤い唇から漏れる声は甘く、耳に触れるだけで男の理性を霞ませるであろう声色。豊満な胸を強調するように開いたオフショルダーの黒いドレスはミニスカート程の丈に調整されている、腹部はヘソを中心にハート型に切り開かれておりスカートからは長い黒色の尻尾が自分の意思を宿すように覗かせていた。  誰が見てもその風貌はサキュバスであることが目に見えて分かった。
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