お前は今日も死んでいる / 第1話

(短編)

処刑台の上で、私は静かに笑った。 ──また、この結末か。 ギロチンの刃が振り下ろされる寸前、私は理解した。 どう足掻こうが、私にはバッドエンドしか訪れないのだと。 ◇◇◇ 目を開けると、そこは見慣れた自室だった。 手元には、つい先ほど燃やしたはずの婚約破棄の証書。 侍女たちは何事もなかったかのように動き、窓の外では鳥がさえずっている。 「……また、戻ってきたのね」 私はこの世界の「ラスボス悪役令嬢」。 何度死んでも、必ず処刑前に戻される。 しかも、私がどんな選択をしても、バッドエンドを迎える運命は変わらない。 ヒロインに優しくすれば、彼女は毒殺され。 国外に逃げれば、戦争が勃発し。 修道院に隠れても、天災が降りかかる。 幸せになろうとするほど、世界が壊れて行く。 「……ふふっ」 私は口元を押さえて笑った。 もうわかったわ。 幸せを求めて足掻くから、この運命に抗えないのよ。 「なら、最悪の選択肢を選んでやる」 積極的に、最悪の道を選べばどうなるのか。 例えば、国王を暗殺するとか? この国を滅ぼすとか? どうせ死ぬのなら、とことん悪を貫いてやる。 私がラスボスなら、この物語のエンディングを決めるのは私。 ──さあ、神様。バッドエンドしか許さない貴方に、私の懺悔を聞かせてあげる。 ◇◇◇ 「というわけで、まず国王をぶっ殺して差し上げることにしたわ!」 ド派手な黒装束に、ベルトには毒薬、ナイフ、爆薬。 あぁ、見ているだけでイっちゃいそう‥‥ 「お嬢様、どうされましたか?」 おっと、侍女たちが不審げにこっちを見ている。 よし、ここは華麗に─── 「夜のお散歩よ!さあ、目を閉じて100秒数えてちょうだい!」 「えっ…はっ、はい……?」 今だわ! 侍女が数え始めた瞬間に、私は窓からダイブした。 夜風が心地良い。というかやっぱり3階は高い。足がジンジンする。 「さて、国王陛下、お目にかかりましょうか!」 そう呟いて、私は宮殿の屋根を疾走した。 次の瞬間 ─── ドカンッと、大きな爆発音が鳴り響いた。 侍女と騎士たちが、大慌てで犯人を探している‥‥。 まさか国王の実の娘が、宮殿を爆破するだなんて思わない。 ── この展開、誰も予想出来ないでしょ? ◇◇◇ 宮殿の裏口から忍び込み、私は静かに廊下を進んだ。 警備は意外と手薄。 まるで「誰も襲ってこない」とでも思っているかのよう。 「怠惰ね。私が居るというのに」 私は笑いながら、寝室の前に着いた。 ドアの前には二人の衛兵。 サボりながら熟睡している。 「ちょろすぎるわね」 そっとナイフを取り出し、衛兵二人の喉をかき切る。 「おやすみなさい」 永遠の眠りについた二人を尻目に、私は寝室のドアを開いた。 そこには── 「……くかー、くかー」 国王である父上が、いびきをかきながら大の字で眠っていた。 「間抜けね……」 私は思わずつっこんだ。 威厳ゼロ。まさに、駄目な親父。 「……まあ、いいわ」 枕元に毒を仕込み、心臓に短剣を突き立てて── 「んがっ……!?んぐぐぐぐっ!!?」 国王が目を覚ました。 「あっ、しまった。刺す場所をミスりましたわ!」 国王の叫び声が響き渡る。 「……あっ」 私は再び全力で窓から飛び出した。 ── この展開、誰も予想出来ないでしょ? ◇◇◇ ──そして、国は燃えた。 宮殿の爆破、王族の崩壊、民衆の反乱。 私は全てを壊し、世界は崩壊した。 しかし── 「……あら?」 目を開けると、また自室だった。 手元には、燃やしたはずの婚約破棄の証書。 「……なるほど、これは詰んだわね」 世界を滅ぼしても、私は戻ってくる。 「なら次は……どうしようかしら?」 私は微笑んだ。 いや、違う。 私は、笑った。 ──まだ楽しめるのね‥‥この美しい狂想曲を!!

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