雪森蓮 / 第1話

長谷川奏の1日。未来の僕、爆死

朝。 スマホのアラーム。 『06:30』 奏は布団の中で目を開けた。 「…………帰りてぇ」 まだ家を出てもいない。 なのに、もう帰りたい。 人類史において最速クラスの“帰宅願望”だった。 重い身体を引きずってスマホを見る。 通知。 【給与振込】 「おっ」 一瞬だけ、目が覚める。 だが次の瞬間。 【前給サービス利用額 -42,000円】 「……………………」 奏は天井を見上げた。 思い出した。 家賃。 そう、家賃である。 先月の自分が、 「未来の僕ならなんとかするだろ」 という極めて他人事な判断で前借りを実行していた。 そして現在。 未来の僕、爆死。 「終わった……」 退勤後。 疲労で判断力を失った奏は、 コンビニ前で五分ほど立ち止まったあと、 ふらふらとラーメン屋へ吸い込まれていった。 券売機。 『味玉ラーメン 980円』 「…………」 高い。 いや、別に普通だ。 普通なのだが、 今の奏にとって煮卵は“贅沢品”だった。 だが今日は五連勤四日目。 人間には、 生きるために必要な栄養がある。 そして今の奏に必要なのは、 タンパク質ではなく“希望”だった。 ピッ 食券購入。 着席。 数分後。 運ばれてきたラーメンの中央で、 つやつやと輝く煮卵。 奏はそれを見つめ、 小さく呟いた。 「……今日くらい、いいよね」 その声音は、 長い戦争を終えた兵士のようだった。
カクヨム、小説家になろうにも同じ話をのせてます

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