鹿島駿河守忠継 / 第1話

解雇…もとい追放宣告

 「第一騎士隊長ジューク、お前を今日限りで騎士隊長の任を解き、我がフリクトラス伯爵家より、追放する」  贅を体現するかのように金色と白色に染め上げられた大広間、朝日が入れば教会の聖堂と見まごう程の輝きを発する広間の上座に、でっぷりと腹の肥えた醜悪な笑みを浮かべる男が、黒髪で引き締まった体躯の男を見下している。  「承知致しました、伯爵閣下」  ニタニタと不愉快な笑みを浮かべる、伯爵と呼ばれた男とは対照的に、不敵な笑みをニタリと浮かべ、蛇を射抜くような眼差しを伯爵の首に据える。  どうなっても知らないからな《《盆暗| ぼんくら》》公子様。 |---  リーズヘル王国南東部に領地を持つフリクトラス伯爵家。20年前に先代当主ドーロゴナス・フリクトラスによって興された新興貴族である。ではなぜ20年程度で伯爵位まで上り詰めたか、《《単| ひとえ》》にドーロゴナスの武勇と忠誠心からである。  数十年前、反乱がリーズヘル王国内で多発した時、東方の軍だけでは決定打に欠け、ジリ貧となっていた。そんな時に義勇兵として参戦したのがドーロゴナス。  彼は持ち前の怪力で6尺もある金砕棒を振るい、敵の陣に風穴を開け、各戦線の敵大将を数多く討ち取った。  その功績が当時この辺り一体を治めていた子爵から王家に伝わり、騎士爵を賜った。  晴れて国に認められ、国軍のエースとしてメキメキと頭角を表した彼は、王国史でも稀に見る豪傑として国内外から注目の的だった。 |---  俺はそんな《《御館様| おやかたさま》》に買われた奴隷だった。  8歳の時に拾われてから16年、御舘様の下で武術を習い、兵法を習い、徳を学んだ。  それもすべて亡き御屋形様からの御恩に報いるため。  それも3年前に叶わなくなった。  晩年、腹の持病が悪化し、ひと月もしないうちに亡くなられた。  息を引き取られる間際、御屋形様はご家族5人と俺、魔術師長、執事長それぞれに遺書を残していた。  俺はあくまで俺のものしか内容は知らないが、遺書にはこのようなことが書かれていた。  「我が家きっての勇士ジュークよ、お前はこの16年俺と俺の家族のためにすべてを尽くしてきた。感謝の言葉も出ないほどに感謝しているよ。お前が今後も子供達、領地領民を守り続けてくれることを祈るよ。さて、私の亡きあと、恐らく次男のアーノルドが家を継ぐだろう。そうなったときお前は家を追放されることになる。そうなったときは好きに生きなさい。ほかの貴族たちもお前の事は知っているだろうから、いざとなったら私の友人たちを頼りなさい。体に気をつけてな。」

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