NAWOMIDOU / 第15話

第七部:記憶の渚と、消えない祈り2

 十五年前、私は一度だけ、インターネットの検索窓にあなたの名前を打ち込んだ。  何の意味もない。ただの気まぐれだった。  驚いたことに、あるサウナ関連の企業の役職者リストに、あなたと同姓同名の名前を見つけた。  「あなたはまだ、あの世界で戦っているのか」  私は、パソコンの画面を凝視した。  けれど、そのページも数ヶ月後には消えていた。会社の情報は更新され、あなたの名前はデジタルという大海原の底へと沈んでいった。  今のあなたを知る術は、もう何ひとつ残っていない。  今の私は、かつての私のように、あの会社を単純に「ひどい場所だった」と断罪することはできない。  確かに、あそこは異常だった。セクハラが横行し、人間の尊厳が軽んじられる、泥濘のような場所だった。  けれど、その泥濘のなかで、私はあなたと出会い、共に笑い、そして共に傷ついた。あの場所があったからこそ、私は「人間として守り抜くべきもの」の重さを知ることができたのだ。  今、私は自分自身に問いかける。  私は、あなたを愛していたのだろうか。  答えは、二十年経っても出ないままだ。  それは恋愛という甘い言葉で括るには、あまりにも泥臭く、あまりにも痛ましい感情だった。  私はただ、あなたという存在を、自分自身の「まともさ」の証として握りしめていただけなのかもしれない。あるいは、守れなかったあなたを思い出すことで、自分を永遠の「敗北者」として繋ぎ止めようとしているだけなのかもしれない。  けれど、それでいいと思っている。  記憶が不確かでも、あなたが今どこで何をしていようとも、私の心臓の片隅には、あの夜、焼きそばの青のりを歯につけて笑った、二十歳のあなたの残像が棲みついている。

運営おすすめ

週間ランキング

全ランキング

反応スコアランキング

もっと見る

PV・ブックマークランキング

もっと見る

更新された連載作品

すべて見る
読み込み中…

新着短編

すべて見る
読み込み中…

作品一覧

読み込み中…

作品ダッシュボード

作品全体の公開状況と、読者からの反応をひと目で確認できます。

作品パフォーマンス

選択期間のPVが多い順

上位5作品
ライブラリ

作品の公開状況と構成

最近の更新

最後に編集した作品

要チェック

公開前に確認したい項目

プレビュー
読者に表示される見た目

表示設定

文字サイズ
100%
背景色
縦書き表示
リッチモード
目次
読み込み中…

キーワードを入力して作品を探しましょう

アクセス解析
アクセス解析データは 5分おき に自動更新されます
読み込み中…
ランクイン記録
通知
通知はありません
地形ブラシ
25
スタンプ
ツール
装飾
表示
100%

世界地図

100%

REACTION SCORE

反応スコアの内訳