猫叉 / 第1話

はるか昔の御伽噺を

今は昔___ 世界を蝕み、混沌の地へ貶めようと魔族が侵攻しました。 街は焼け、自然は枯れ、都市は更地に返還されました。 それはそれは恐ろしく、突然の崩落に人間には成す術もありませんでした。 ある日突然、一匹の龍が現れました。 闇に堕ちた世界に見合わない巨大なそれは白く、そして金をばら撒いているかのように光り輝いていたのでした。 支配者とたらしめるような品格、覇気。 ある者はそれが魔族の王であるのではないかと。 ある者はそれが終焉を告げる者なのではないかと。 またある者は、それが己を救う希望の光なのではないかと。 しかしその龍は人々に目もくれず、ただ、ただ静かに空を巡るだけなのでありました。 荒れ果てた大地の上を、黒煙が立ち上る街々の上を、魔族が蔓延る暗い森の上を。 ただ、ただ静かに、傍観しているだけなのでありました。 人々はそれに恐れを抱き、己の存在が露呈しないようにと縮こまるしか成す術がありませんでした。 救済などではなかった、希望なんてない。それが、人々の総意となりました。 やがて龍は大きく息を吸い込み、空へ向かって咆哮を上げました。 それはもう大きな声で、鼓膜が張り裂けそうなほど大きな咆哮でした。 その衝撃は瞬きの間に世界へと響き渡り、ビリビリとまるで雷のように大地に降り注ぎました。 闇に染まった自然さえも龍に畏怖し、魔族はやがて退きました。 そう。龍は、その巨大な白は、堕落した世界を闇から掬い出したのです。 人々は龍を敬い、平伏し、それを「金鱗の黎明」と呼び崇め奉りました。 今は昔。 人々が「金鱗の黎明」と呼んだその日より、長い年月が流れました。 龍の姿を見たという者は次第に減り、やがて誰もがそれを御伽噺として語るようになりました。
語り部の口から口へ、親から子へと受け継がれながらも、その姿は少しずつ形を変えていきました。 
「白く光輝く龍だった」 
「世界を救った神だった」 「ただの大きな雷だったのではないか」 やがて人々は龍をこう言うようになりました。 ――そんなものは、ただの架空生物だ、と。 街には石の城の代わりに高いビルが立ち並び、
馬車の代わりに鉄の車が道を走り、
夜を照らすのは松明ではなく、空の星をも霞ませるほどの光に変わってしまいました。 かつて焼け野原だった大地には新たな都市が築かれ、
かつて魔に堕ちた山々は開拓され街となり、 人はもう、龍を必要としていませんでした。
続くかは分かりません!! 思いつき次第書いていきます

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