さえ / 第3話
はじまりの儀式
天窓から降り注ぐ光と青や赤のステンドグラスに彩られ、神聖な空気に包まれた王室礼拝堂。
国王夫妻や司祭、数名の騎士団員が見守る中、十字架に向かい静かに片膝をつき頭を垂れる紅茶色の髪の青年。端正な顔の右目と左頬には傷痕がある。彼は先日の御前試合で圧倒的な力を見せ、優勝した騎士だ。
「――星冠の神よ、すべてを守護すべしこの者を、どうか護り給え」
歌うような、光に溶け込むように柔らかくどこか不思議な力のある声が礼拝堂に響く。
青年を祝別する声の主は、ローズブロンドをなびかせる、まだあどけなさの残る可憐な少女。
祈りを終えた少女は、青年の額にそっと平和の接吻を与えた。
続いて、祭壇に捧げられた|慈悲の剣《カーテナー》を持ち上げた少女だったが、その重さに一瞬だけ身体をよろめかせた。すぐさま手を伸ばしかけた青年だったが、儀式の最中であることを思い出し、寸前で思いとどまる。
再び頭を垂れた青年の肩に刃を置き、少女は一瞬だけ緊張した表情を見せたものの、意を決してその肩を軽く打つ。
「そなたを、アストリア王国王立騎士団団長……そして王太女の護衛騎士に任ずる」
凛とした声で少女が告げた。
誓いを終え、青年がそっと顔を上げる。
そこにいたのは、正式に己の主君となった少女だった。大きな|菫青石《アイオライト》の瞳を潤ませている愛らしい王太女――彼女こそが、青年にとって闇を照らす一筋の光だった。
「――盾となり剣となり、この国と御身をお護りいたします」
青年の|翠玉《エメラルド》に金の散った美しい瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。
差し出された白い小さな手の甲へ口づけを落とし、この命も全てを捧げると忠誠を誓う。少女は頬を薔薇色に染め、嬉しそうに目を細めた。
「この国の守護者、わたくしの騎士」