Sakusaku / 第106話

14:これらの話をYouTubeでシェアしてもいいかもしれません。

 015 「どうした……」  コスプレエリアへ向かうと、ハルが女の子たちからかなり離れた場所に立っていた。俺が来るなり、菅原の方を指差した。そこには一人の男が立っていて、口元を手で隠しながら何かをこそこそと話していた。 「助けに行こうとしたんですが、高田さんに止められて……」 「あれは何なんだ……」  その男はいなくなった。  俺とハルは二人のところへ近づいた。 「さっきの誰だ……まゆりの彼氏か?」 「バカ言わないでください!……わたし、女の子が好きなんですよ……」  そうか……まゆりという名でゆりが好き……また対照的だな。  菅原とまゆりがあるお茶のペットボトルを見せてくれた。   「まあ……ヤリモクのグループが、おごってくれてたし……」 「飲み物!?……そんな人からもらったものをよく飲めるな!」 「大丈夫ですよ……どうせいつも捨ててますから……」  やれやれ……少し安心した。 「さっきの人、まゆりんのファンなんですよ……Instagramにコミケに来るって書いたら、来て写真を撮って飲み物を買って帰るんです……イベントが終わると『美味しく飲んでね』ってDMが来るんです……」  危なすぎる…… 「返信はしてないよな?」 「してないです……」  ふう……よかった。 「じゃあブースに戻ろう……その方が安全だから……」  二人がうなずいた。俺とハルはブースに戻り、二人は着替えに向かった。 「うぅ……うぅ……」 「ハルくん、どうしたんですか?」 「えっと……さっきまた知らない人に体型のことを言われたみたいで……」  俺は悠太に目で合図をして、ハルを連れて会場を少し歩いてくるよう伝えた。今日のバカらしい出来事から少し気持ちを休ませてやることにした。 「……全く……この子ばかり責められて……五百円ください」 「あの子、よく体型のことを言われるのか? ああ、三千五百円ね」 「はい……体型もそうだし、顔もあまり整ってないから……女の子のグループに定期的に嫌がらせされてるみたいで……」  悠太がいなかったら……今頃どうなっていたか。 「人は外見で判断するものだし……つい最近は失恋もして……正直なところ、見た目は落ち着いてても、心の中ではかなりしんどいと思うよ……」 「…………」  その後、女の子たちがブースの手伝いに来てくれて、午後三時頃には全部売り切れた。 「はあ……疲れた……」  みんな少し消耗した顔で後片づけをして、帰り支度をした。 「大丈夫か……」  俺はハルに聞いた。 「はい……少し気持ちが楽になりました……」  顔色を見ると、確かに少しだけマシになっていた。俺はその日の売り上げをすべて取り出して、五人に均等に分けた。 「え……これ、何ですか?」 「今日みんなが手伝ってくれたんだから……一人で全部もらうわけにもいかないだろ……」  二十万円の収入のうち、原稿の持ち主である深冬に半分の十万円を渡すつもりでいた。その残りを菅原のVTuber活動の資金に充てようとも思っていた。  そして全員に一万円ずつ分けた。少ない額ではあるが、今日一日の色々なことを乗り越えた後の気持ちへの、せめてもの慰めにはなるだろう。 「同情で渡してるんじゃない……今日みんながいてくれたことが、それだけの価値があったってことだよ……それだけだ」  みんな黙っていた。そのとき菅原が俺の顔を少し見つめてから、カメラを差し出した。 「ほら!みんなそんな暗い顔しないで……せっかくだから記念写真を撮ろうよ……」 「待って!俺が菅原の隣でセルフィーを撮るんだけど!」  その声を聞いた悠太も黙っていなかった。 「それは俺ですよ!」 「は!?……そんなわけないだろ! 隣に立つのは俺に決まってる!!」  みんながわいわいと菅原の隣を争いながらくっついていた。アキラちゃんがそれを見て小さく笑い、一緒に加わろうとした。 「どうしたんですか、ハルくん……こっちへ来てよ……」  そう言いながら小さな手を差し伸べた。 「うん……」  ハルはその手を取って、みんなの輪に入ってきた。 「ハル!どいてくれないか!?」 「え……外れたら可愛い写真が撮れないじゃないですか……」 「チャンスだぞ」「おい悠太!便乗するなよ!」 「撮りますよ……」 「ちょっと待って」 「いち……に……チーズ!」  十年ぶりに、新しい仲間と集合写真を撮った。  その日はみんなを乗せて高速道路を走りながら、車の中で歌いまくった。最高に楽しかった。  帰りにみんなを送り届け、車を返しに行って……リタちゃんとも少し遊んだ。  今日あったおかしな出来事をインターネットの人たちに話してみたいと思った。それで…… 「完成した……!」  もう一度クリックした。そして自分のYouTubeチャンネルを誇らしげに眺めた。 「アキさんが遭遇した変な出来事……」  チャンネル名はちょっとあれだが、まあ使えるだろう。  最初の動画は、今日起きたことを生々しく語る内容にした。もちろん、登場した全員の名前は変えてある。 「はあ……また仕事が増えてしまった……」  階下に降りて夕食の準備をした。深冬は部屋にいた。 「深冬……少し話がある」  彼女がドアを開けた。 「読書中……短くして」  相変わらずだった。 「これ……今日コミケに行って、お前が昔描いた同人誌を売ってきた……二十万円になった……一半はお前のものだ」 「……あ……そうですか……ありがとう」  封筒を受け取って、また部屋に戻っていった。 「……読んでくれた人たちが、すごく上手いって言ってたよ……もし良ければ、続きを描いてくれないか……」 「…………」  また沈黙だった。 「夕飯作るから……お腹が空いたら降りてきて……」  返事はなかった。いつも通り。  夕食を作り始めたとき、LINEで「変な人たちの集まり」というグループに追加された。最初はスパムかと思ったが、追加してきたのは菅原だった。  彼女は今日みんなで撮った写真をグループに投稿した。 「いいな……」  これを見て、学生時代を思い出した。 「明日、この写真を印刷して額縁に入れておこう……」  長い夜が静かに過ぎていった。そしてまた、いつもの日常へ戻っていった。
わあ……正直なところ、自分の作品が3回連続でランクインするなんて!信じられない思いです。本当に感激しています。皆さん、本当にありがとうございます。

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