Sakusaku / 第108話

16:あれはあなたの彼女ですか?彼女は学生じゃありませんか?

 017  十七日の夕方……俺は両手いっぱいに食べ物と炭酸飲料を抱えていた。菅原も荷物を持つのを手伝ってくれた。悠太たちも誘ったが、部活があるということで、無理に引き止めなかった。 「まさかアキトさんのお家に来ることになるなんて……」  彼女はとても嬉しそうだった。今日の服装はいつもと少し違って、水色のサメ柄のパーカーに黒いショートパンツ、サンダル姿だった。 「俺はいつお前の家に行けるんだ……」 「え……男の人が女の子の部屋に入るには、付き合い始めて少なくとも五ヶ月は経ってからですよ」  何のノルマだよ…… 「……やっとお前の普通の格好を見られたな」 「何言ってるんですか!わたしだって普通の服着ますよ!」  本当に?……会うたびに凝ったコスプレか、目を引くような格好ばかりしている印象なのだが。 「まったく……お酒を二、三本買っていこうと思ったのに、止めるから」 「アキトさんもう……友達が子どもを連れてきたらどうするんですか?お酒なんて飲んでたら子どもが真似したいって思うじゃないですか。炭酸飲料だけで十分ですよ……家でのパーティーでも関係ないですから……」  子どもが好きそうだな、この子は。 「……言われてみれば、もっともだ」  二人で話しながら歩き、玄関の前で立ち止まった。 「……深冬、もう帰ってるかな」 「妹さんですか?」 「ああ……お前は会ったことないよな……会ったら紹介するよ。ほら、入って」 「お邪魔します……」  靴が一足、下駄箱のところに置いてあった。部屋にいるんだろう。  考えてみれば、ずいぶん経つな……ここに友人以外の誰かが来たのは、いつ以来だろう。 「わあ……広いお家ですね……」 「寝室が二つ、バスルームが二つ。二階建てで……台所、リビング、ダイニング……それと余ってた部屋を娯楽室にしてる」 「この辺でこういう一軒家、もう見つからないですよね……マンションかアパートばかりで……」  昔はこのあたりにも家が何軒かあったが、固定資産税が高くなるにつれてみんな引っ越していった。残ったのは俺の家だけだ。  前にも話した通り、おじさんとおばさんが残してくれた遺産で固定資産税と生活費のすべてを賄い、市役所の人間に管理を任せていた。その後は更屋敷双葉のお嬢さまにも助けてもらったおかげで、この最後の家で暮らし続けられている。 「気楽にしてていいよ……手伝ってくれるなら来てもいいけど」 「じゃあ手伝います!」  こうしてみると本当にカップルみたいだな……この子のことが本当に好きで良かったと思う。  しばらくして玄関のチャイムが鳴った。菅原は台所で料理をしていた(エプロンをつけると格段にかわいい)。俺が玄関に出た。 「よ……久しぶりでも相変わらずだな」 「元気そうね……」  最初に来たのは、俺が知る中で一番微笑ましいカップルだ。  丸山シンヤと、美しい奥さんの月ノ森……いや、もう結婚してるから丸山ナオか。 「古風なやつが久しぶりなんて言葉を使えるのか?ははは。どうぞ入って」  シンヤのことを一言で表すなら、キャプテン・アメリカを思い浮かべてほしい。  そしてナオちゃん一人だけではなかった。 「こんにちは」「こんにちはー、アキトおじさん」 「あ……ベレちゃん……ジエルくんも来たのか」  家族全員で来てくれたらしい。 「変わってないなあ……ここは……」 「そうだな……」  またチャイムが鳴った。 「よ……お前の顔を見たら抱きしめたくなるんだよな……」 「元気だった?アキトくん。あなたと深冬ちゃんにお土産を買ってきたよ」  かつて誰にも手が付けられなかった腕白者、木仁人郁朗。そしてその腕白者を唯一手懐けられた小柄な先輩姉さん、木仁人加東。 「来ないかと思ったよ……」 「久しぶりなんだから、来るに決まってるだろ」  俺は郁朗くんを抱きしめてから、二人を家に招き入れた。 「まあ……遅れてしまいましたかしら」 「こんにちは、アキト様……」 「来てくれてありがとうございます、お嬢さま」 「まあ……会いたかったわ」 「やったー!お家に来た!!」 「静かにしてちょうだい、リタ」 「よ……入って」  騒がしい声が聞こえてきたのか、深冬が部屋から出てきた。友人たちが思い出話に花を咲かせていた。子どもたちはリビングのゲームで遊んでいた。俺は菅原と台所で料理の準備をしていた。 「あら……深冬ちゃん……久しぶり……チーズケーキ買ってきたわよ。好きでしょ」  加東先輩が手を振って声をかけた。 「はい……みなさん、こんにちは……」 「大きくなったわねえ……昔は私の腰くらいまでしかなかったのに……」  スミちゃんも近づいて声をかけた。 「あの……は、はい……わたし……お兄ちゃんの手伝いをしてきます!」  もう限界だったんだろう。学校での彼女のことは知らないが、長い間誰ともほとんど関わらずにいたから、こうなるのは当然だ。 「……あの子、どうしたの?」 「……昔とは変わってしまったわね、本当に……」 「きゃあ!!!!」  深冬が台所に入るなり、家中に響く叫び声を上げた。みんなが何事かと駆けつけた。 「何がありましたか、深冬様……」  一番最初に飛び込んできたのはアオイちゃんだ。さすが悪女お嬢さまの一番のメイドだけある。 「お、お兄ちゃん……お兄ちゃんが女の子を家に連れてきてる!!」  野菜を切っていた菅原が、その場にいる全員に向かって美しいお辞儀をした。みんなが固まった。 「はじめまして。菅原サメといいます。アキトさんの彼女です。付き合い始めてもう二ヶ月半になります……よろしくお願いします」 「まあそういうことだよ……仕事帰りにこの子に会って……かわいいだろ?」  家の中がしんと静まり返った。そしてすぐにまた賑やかになった。 「え!……何これかわいい!」「ありがとうございます……」 「ちっちゃい!」「え……そうですか?」 「こいつ何も変なことしてないよな!?」「ちょっと!……」「してませんよ、ナオ先生……」  この子ならみんなとうまくやっていけそうだな…… 「少しよろしいですか、サメ様……」  アオイちゃんが菅原の前に立った。 「もちろんです……」 「サメ様は、まだ学生でいらっしゃいますか……」  薄ら寒い風が背中に当たった気がした。千本の針が全身に刺さるような感覚が走った。 「はい……今年で高校二年生です……」  彼女は笑顔で答えた。しかし友人たちは全員、俺に向かって怒りの目を向けてきた。特にナオちゃんが。 「あんたねえ……」  まずい。 「何してんのよ!この子まだ若いじゃない!」「ロリコン!」「アキトは幼女趣味か!」 「ちょっと待て!恋愛に年齢は関係ないだろ!深冬、こいつらにちゃんと言ってくれよ、俺はそういう人間じゃないって!」  俺は深冬に目を向けた。 「ロリコン変態……」 「おいこら!!待てって!!」  みんなが爆笑した。やられた……からかわれていたんだ。 「絶対に全員仕返ししてやるからな!!!」  怒り心頭のところに……またチャイムが鳴った。  俺は玄関を開けた。そして目の前の光景に、しばらく言葉を失った。 「にぎやかそうね……昔から変わらず騒がしいのね、あなたって……」  黒髪をポニーテールにした女性が立っていた。眼鏡をかけて、大人っぽい落ち着いた雰囲気の服装が、彼女をひと目で美しく見せていた。 「俺はまだ老けてないから……」 「入れてもらえるかしら?」  ……入れてもらえるかしら。そうか、連れがいるのか。隣の男はハンサムだった。夫か。 「遅かったじゃないか……こんなに遅れてくるってどういうことだよ、お前が主役なのに。星野」  彼女こそ、中学時代の俺の元カノ、星火かわ星野だ。 「わたしが主役って……あなたが主催でしょ……」  そうして二人を家に迎え入れた。
学生時代は、パートナーと別れてすぐに別の相手へと移ることが容易な時期ですが、大人になるとそうはいきません。心を満たしてくれる生涯の伴侶を求めるという人間の根源的な欲求があるからです。こうしたことは、様々なメディアに登場するキャラクターについても同様に言えます。

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