人生平坦道 / 第23話

惨めな押し付け合い

 翌朝、朝食時に昨日の事を軽く聞いた。エルフの長に話をしたら快く承諾してくれたらしい。  昨晩急に声がピタっと止んだ理由はそういうことだったのか……何だ、話せば分かるいい人たちじゃないか。  身支度を済ませ村長の家に三人で訪問、ベオウルフは朝食の片付けの為来なかった。  家の前には村のエルフ達がこぞって集まっており、道の両側に整列しその間を通過する度に頭を下げていた。  えっ? どゆこと? 二人に目を配らせるも二人共私と目線を合わせようとしなかった。  エルフ達も歓迎してくれている様子では無かった。  だって全員怯えてるもの、震えているもの。  そしてエルフ達もまた誰一人としてこちらと目を合わそうとしないし。  家の前に着くと入口らしき所が四角く穴のようにえらく大きく空いていた。斬新と言えば斬新。  エルフにはセキュリティといった概念は無いのだろうか。そのままその入り口から家の中に入り村長と対面する。 「よ、ようこそいらっしゃいました、私この村の村長をしております。ミリシェラ・ティールと申します、どうぞこちらへ」  中で待っていた村長は笑顔で私達を招き入れ、応接室まで案内をする。  凄く愛想がいいじゃないか、聞いていた話ではやや傲慢な態度が見えるプライドの高そうなエルフという話だったのに。  私は案内の最中少し気になった事を尋ねる。 「他の家同様玄関の扉は付けた方がいいのでは? あれでは虫や泥棒が入ってくるでしょうに……」 「え、ええそうね、付けて頂くよう依頼をしておきますわ、オホ、オホホ」  一瞬頬がピクッと動いた気がしたが忠告をすぐに受け入れてくれるとは……やはり聞いていたよりずっといい人達じゃないか。  応接室に入り報告書を受け取りにこの村に来た旨を伝える。 「あぁそういう事でしたのね、それならこちらに用意しておりましたわ」  そう言って引き出しから封筒を取り出し受け取る。  凄くスムーズに終えたことに戸惑うも、もう一つの要件、ルナについてを口に出す。 「こちらのルナが我が王都グレイシア王国に住みたいと言っています。一応住める場所はあるにはあるのですが……」 「ええっ! あのルナが王都に⁉」  凄く驚いた表情をミリシェラが見せる、そりゃそうだろう……百年以上世話を焼き、きっと自分の子供のように育てていたであろうルナが急に出ていくと言ったら寂しくもなるよなぁ。 「ミリシェラ。私行ってきていいかな、育ててくれた恩をまだ返せてないけど……」 「もちろんですッ! 行ってきなさい今すぐッ! ダークエルフになった時は驚きましたけども……皆様どうかこの子をよろしくお願いします」  物凄く嬉しそうな満面の笑みを表情をミリシェラが見せていた。自分で決断した事に対して引き留めず応援をする……やはりいい人じゃないか。 「何もできない子ですが魔法の腕はこの村一番ですので。正直私も心配だったのですよ、毎日毎日家に引きこもり食事にだけは手を付けてはいましたが顔も見せずでしたので……。畑作業を手伝ってくれると言っては収穫時期ではない物まで全て採ってしまったり、魔物の駆除をしてくると言っては森の四分の一を焼いてしまったりして……」  何か聞いてた話とは違うエピソードだった。セラが屈んでルナ目線で睨みつけている。 「この村でも少し浮いていましたから。やれ私はお前達とは出来が違うだの、やれ飯が不味いだの、他のエルフの事を愚民やら雑魚等と言って孤立状態になっていまして……」  チラッとルナを見ると視線を逸らしている。顔からはだらだらと大量の汗が吹き出ている、こいつ……。 「王都に行きたいと言ってましたがやはりこの村が恋しいそうですので置いていきます。あっどうやら住む場所がもう埋まってしまったそうで、残念極まりないですが……」 「ちょ、ちょっと待ってくださいアネットさん!」 「いえいえ、この子はいつもこの村をつまらない代り映えの無い村と言っておりました。どうかこの子を王都へ連れて行って世界の広さを見せてあげて欲しいのです」 「ミリシュラ⁉ ちょっと黙って」  いやいやいや、どうぞどうぞとルナの押し付け合いが始まる。  沈黙していたセラが細めた目でルナを見ながら質問する。 「ルナが人を見下したり、他人に迷惑を掛けず社会に適応するというなら住んでもいいわよ、どうする?」  以外にもセラが肯定的だった。てっきり真っ先に王都に来ることを拒むとばかり思っていたが……。 「セ、セラフィーナさん……。私心を入れ替えます、人様に迷惑を掛けないと誓います。アネットさんセラフィーナさん今後ともよろしくお願いします」  ルナがうるうるとした目で宣言し頭を下げる。こうなったらもう私が口出すのは無粋だな。 「いろいろ言いましたが純粋でいい子ですのでどうぞ宜しくお願いします。いつでも遊びに帰っていらっしゃい」  ミリシュラがまるで聖母のように微笑みながら私達に頭を下げる。じーっとセラの目を見ると少し顔を赤らめ目を逸らした。何考えてるんだこいつ。 「まぁ腐っても聖職者だからね、他意はないわよ」  そう言い残し私達はエルフの村エルノアを後にした。

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