芦名 雅 / 第50話

第50話【急募】幼馴染 ※経験不問・未経験者歓迎

どこかで、誰かの恋がはじまる ■募集職種 「専属の話し相手」兼「もしものときの緊急連絡先」 ■勤務地 高校三年A組、窓際から二番目の席周辺 ■応募資格 ・幼少期からの勤続年数、十年以上(必須) ・素っ気ない態度の裏に、面倒見の良さを隠し持っていること ・相手の些細な変化に、誰よりも早く気づけること ■仕事内容 ・毎朝の登校時、さりげない世間話の提供 ・購買のパンを買い忘れた際の、緊急シェア対応 ・進路相談、恋愛相談(自分のことは棚に上げがち) ・体調不良時の、過保護なまでの心配業務 ■募集の背景 * 「――なあ、雫(しずく)。この求人票、お前が書いたのか」 放課後の教室、掲示板に貼られた謎の紙を見つけた高瀬(たかせ)蓮(れん)は、隣の席の幼馴染、雫に問いただした。 「気づいた? うん、私が書いた」 「なんでこんなもん、書いたんだよ」 「だって、蓮って鈍感すぎて、いくら態度で示しても気づいてくれないから。だったら、いっそ求人票にして、はっきり書いた方が伝わるかなって」 雫は悪びれもせず、そう言い放った。蓮は求人票を、もう一度、頭から読み返す。 ■待遇 ・毎日の何気ない会話(無給、ただしやりがいあり) ・困ったときは、必ず駆けつける(相互扶助制度あり) ・将来的には、恋人、あるいは伴侶への昇格制度あり 「……最後の一文、これ、明らかにお前の願望だろ」 「バレた? まあ、そういうこと」 雫は、少し照れくさそうに視線を逸らしながらも、まっすぐに続けた。 「単刀直入に言うね。蓮のこと、幼馴染としてじゃなくて、ちゃんと、一人の男の子として、好き」 ■応募方法 「はい」か「はい、喜んで」のいずれかで、直接本人に回答すること。 求人票の最後に書かれた一文を見て、蓮は思わず吹き出した。 「なんだよ、この応募方法。選択肢、実質一択じゃねえか」 「気づいた? そういうことだから」 「……分かったよ。降参だ」 蓮は、求人票を丁寧に折りたたみながら、雫にまっすぐ向き直った。 「雫、俺も、ずっと同じ気持ちだった。この求人、喜んで、応募させてもらう」 「採用、決定ね」 雫は満面の笑みを浮かべ、蓮の手を取った。 ■その後の勤務状況 十年間の勤続実績を経て、正式に「恋人」というポジションへ昇格した二人。以後の業務内容に、大きな変化はないが、毎日の何気ない会話に、少しだけ甘さが加わったという。

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