白井黒也 / 第3話

第2話「空からの追跡者」

荒い息が、昼下がりの路地裏に熱く滲んだ。 頭上には高く青い空が広がっているはずなのに、ビル群に挟まれたその場所には、昼間だというのに妙な薄暗さが落ちている。 倒れ伏した黒服たち。砕けたアスファルト。壁に刻まれたひび割れ。 ほんの数分前まで確かにそこにあった銃声も怒号も、今は最初から存在しなかったかのように、不自然な静寂へと変わっていた。 けれど、その静けさは安堵なんかじゃない。 むしろ、肌にまとわりつくような嫌な沈黙だった。 「はぁ……っ、はぁ……」 焼けつく喉から荒い呼吸が漏れる。 戦いは終わったはずなのに、心臓だけがまだ警鐘を鳴らしていた。 視線を落とせば、足元には黒服の一人が落とした拳銃が転がっている。 ついさっきまで俺へ向けられていた、分かりやすい殺意の残骸だ。 「翔!? 翔、聞こえてる!?」 耳元のスマホから、澪の切迫した声が飛び込んでくる。 そうだ。通話は、あの襲撃の後からずっと繋がったままだった。 「……聞こえてる」 乱れた息の合間に、どうにかそれだけ返す。 「無事なの!? 怪我は!?」 「……多分、大丈夫」 自分でも曖昧な返答だと思う。 痛みがないわけじゃない。けど、それ以上に現実感の方が薄かった。 ついさっきまで買い物帰りだったはずの俺が、どうしてこんな場所で黒服相手に戦ってるんだ。 『だ、大丈夫……?』 頭の奥で、僕の不安げな声が小さく響く。 『まったく……もう少し優雅さというものを覚えたらどうですの?』 呆れたようなお嬢。 『次はどこだ。まだいるならさっさと来いよ』 戦闘狂は相変わらず物騒だ。 いつも通り、頭の中は騒がしい。 皮肉なことに、その騒がしさが逆に少しだけ俺を落ち着かせる。 ……だが。 『…………』 ふと、違和感を覚えた。 賢者が静かだった。 普段なら、もう少し早く状況を整理するなり、何かしら口を挟んでくるはずなのに。 その沈黙が、妙に引っかかった。 「……賢者?」 呼びかけると、返ってきたのは短く、だが明確な緊張を含んだ声だった。 『警戒してください』 その一言だけで、背筋を冷たいものが這い上がる。 『上方より、強い視線を感じます』 ぞわり、と全身の産毛が逆立った。 『……あはっ、なにそれ。まだ終わってなかったんだ?』 悪が愉快そうに笑う。 その声に急かされるように、俺は顔を上げた。 ビルとビルの隙間に切り取られた、青い空。 ――いた。 高層ビルのさらに上。 そこに、白い人影が浮かんでいた。 一瞬、目の錯覚かと思った。 だが違う。 距離がありすぎて顔までは見えない。 それでも、人の姿をしていることだけは分かった。 白い外套のようなものを纏い、何の支えもない空中に静かに浮かんでいる。 「……は?」 間抜けな声が漏れた。 理解が追いつかない。 だけど、理解より先に本能が反応する。 ――見られている。 顔すら見えないほど離れているのに、なぜかそう確信できた。 ただ浮かんでいるだけじゃない。 あいつは明らかに、俺を見ている。 「翔? どうしたの!?」 スマホ越しの澪の声が、一段強くなる。 「上に……誰か、いる」 言った瞬間、通話の向こうが息を呑んだ気配がした。 ほんの一瞬。 けれど、それだけで十分だった。 「――ッ、翔!!」 次に響いた声は、今までとは明らかに違った。 心配とか困惑じゃない。もっと直接的な焦燥だった。 「そこからすぐ離れて!!」 「……は?」 「早く!! 右、次の角を右!! 立ち止まらないで!!」 「ちょ、待てよ! 何なんだよ、あれ――!」 「いいから走って!!」 返答が、あまりにも早すぎた。 迷いがない。まるで、あの存在が何なのか知っているみたいに。 心臓が、嫌な音を立てる。 「なんでそんなこと……」 「翔!!」 その時だった。 上空の白い人影が、ゆっくりと動き出す。 ただ、それだけ。 たったそれだけなのに、肌を刺すような圧迫感に全身が強張った。 黒服たちとは違う。 比べものにならない。 理屈じゃない。 本能が、あいつはまずいと警鐘を鳴らしている。 「翔、走って!!」 澪の叫びに背中を蹴られるように、地面を強く踏み込んだ。 「っ、クソ!!」 理由なんて分からない。 分からないまま、それでも走る。 背後から追ってくる気配を感じながら、路地裏を飛び出した。 ◇ ◇ ◇ アスファルトを強く蹴るたび、靴裏から伝わる衝撃が足を駆け上がる。 呼吸はとっくに乱れている。それでも身体だけは、生き延びるために前へ進み続けた。 「そのまま直進!! 次の交差路を右!!」 スマホ越しに飛んでくる澪の声は鋭く、息を整える暇すら与えてくれない。 普段の世話焼きで口うるさい澪からは想像できないほど、その指示には迷いがなかった。 まるで、こうなることを知っていたみたいに。 「っ……!」 肺が焼けるように痛む。 それでも言われた通り角を曲がり、人通りの多い通りへと飛び出した。 昼間の街は、皮肉なほどいつも通りだった。 買い物帰りらしい主婦。スマホを見ながら歩く学生。営業途中らしいスーツ姿の男。 その中を、息を切らして駆け抜ける俺へ、周囲から怪訝そうな視線が向けられる。 「な、何……?」 「おい、危な――」 そんな声に構っている余裕はない。 今はただ、あいつから逃げることだけを考える。 「止まらないで!! その先の横断歩道を渡って――」 澪の指示が飛ぶ。 その瞬間、首筋にぞくりと悪寒が走った。 ――まだ、見られている。 『……依然として追跡されています』 賢者の低く冷静な声が、頭の奥で響く。 走りながら、ほんの一瞬だけ視線を上へ向ける。 ビル群の隙間に切り取られた青空。 そこには、やはり白い人影が浮かんでいた。 俺がどこへ逃げようと、一定の距離を保ったままついてくる。 『しつこいですわね……!』 お嬢が苛立たしげに声を上げる。 『だから言ったろ。さっさと落としちまえばいいんだよ』 『あはっ、それも面白そうだねぇ』 「簡単に言うな!」 走りながら吐き捨てる。 戦えって? あんな空を飛んでる奴と、どうやって。 黒服相手とは訳が違う。 相手は俺の手が届かない上空にいる。 「上から追われてるなら……まず視界を切るしかないだろ……!」 半ば自分に言い聞かせるように呟きながら、周囲へ視線を巡らせる。 視界の端に、ひとつの建物が映る。 大通りから一本外れた先。 周囲の建物に挟まれるようにして、古びた雑居ビルが建っていた。 窓の多くは割れ、壁面の塗装も剥がれ落ちている。 入口には立入禁止の札が掛けられていたが、扉そのものは半開きになっていた。 「……あそこなら」 上空からの視線を切れる。 「澪! 近くの廃ビルに入る!」 「えっ!? ちょっと、翔――」 返事を待たず、俺は大通りから脇道へ飛び込んだ。 「悪い! 今は走り続けるより、あいつから隠れる!」 狭い路地を駆け抜け、そのまま半開きの扉へ身体を滑り込ませる。 薄暗い建物の中へ入った途端、外の喧騒が遠のいた。 「はぁ……っ、はぁ……!」 壁に背を預け、乱れた呼吸を整える。 埃と湿気の混じった空気。 ひび割れた壁に、剥き出しになった配管。 奥へ続く廊下には照明ひとつ点いていない。 当然、人の気配もなかった。 「……ここなら、上からは見えないだろ」 そう呟いた直後だった。 『――来ます』 賢者の声に、息を呑む。 「来るって……」 何が、と聞き返すより早く、気配を感じた。 反射的に振り向くと、割れた窓の向こうに、白い人影が浮かんでいた。 「っ……!」 人影が窓から建物の中へと入り込んでくる。 白い外套を翻しながら床へ降り立つと、ゆっくりと身体を起こした。 「……嘘だろ」 思わず後ずさる。 遠目では分からなかったが、こうして見ると間違いなく人間だった。 男は感情の読めない目を俺へ向ける。 「天羽翔」 突然、自分の名前を呼ばれた。 「……お前、何者だ」 問いかけても、男は答えない。 「第一制圧班を退けたと聞いていたが――なるほど」 その言葉に、さっきの黒服たちが頭をよぎる。 「……あいつらの仲間か」 男は否定しなかった。 それどころか、隠すつもりすらないらしい。こちらを見据えたまま、淡々と言葉を続ける。 「第一制圧班からの報告を受け、私が派遣された」 「報告……?」 「コード・キメラを確認した、と」 聞き覚えのない言葉だった。 けれど、あの黒服たちが俺を狙っていたことを考えれば、無関係とは思えない。 「……何だよ、それ」 「お前が知る必要はない」 男はそれだけ告げると、ゆっくりと俺との距離を詰めてくる。 「天羽翔。お前を捕獲する」 「……捕獲?」 その言葉に、眉をひそめる。 人を相手にしているとは思えない、まるで実験動物か何かを扱うような言い方だった。 「ふざけんな。誰が大人しく捕まるかよ」 俺が吐き捨てても、男の表情は変わらない。 最初から俺が従うことなど期待していなかったのかもしれない。 「そうか。ならば、力ずくで連れていく」 男がこちらへ手を向けた。 次の瞬間――。 「ぐっ……!?」 全身に、凄まじい重さがのしかかった。 突然のことに身体がぐらつき、慌てて足に力を込める。 だが、踏ん張ろうとした両脚まで異様に重い。肩にも、背中にも、頭にも、見えない何かが圧し掛かり、全身を床へ押しつけようとしてくる。 「な、なんだ……これ……!」 歯を食いしばり、どうにか身体を起こそうとする。 それなのに、力を込めれば込めるほど、自分の身体そのものが何倍にも重くなったような感覚に襲われた。 呼吸すら苦しい。 胸を押さえつけられているわけでもないのに、立っているだけで全身の力が奪われていく。 「ぐ、ぅ……っ!」 とうとう耐えきれなくなり、片膝が床へ叩きつけられた。 鈍い痛みが膝から駆け上がる。 咄嗟に片手を床についたが、その腕にも容赦なく重さがのしかかり、身体を支えるだけで精一杯だった。 「な……何しやがった……!」 どうにか顔だけを上げる。 男はその場から一歩も動かず、苦しむ俺を見下ろしていた。 「抵抗するだけ無駄だ」 さらに身体へとかかる力が増す。 「がっ……!」 肘が折れかけ、身体が一段低く沈む。 このままじゃ、本当に床へ押し潰される。 「このまま動けなくなってもらう」 「ぐっ……!」 さらに力が増した。 床についた腕が震え、今にも肘から崩れ落ちそうになる。 どうにか身体を支えようと力を込めるが、肩から押し潰されるような重さは増すばかりだった。 まずい。 このままじゃ、本当に動けなくなる。 『翔……!』 頭の奥から、僕の声が聞こえた。 『代わって! 僕なら……僕の力なら、きっと!』 「お前の……?」 問い返したところで、考えている余裕なんてなかった。 俺自身の力だけじゃ、身体を起こすことすらできない。 「……頼む!」 そう答えた瞬間、意識の奥から何かが一気にせり上がってくる。 身体の主導権が切り替わる。 『う、ぐ……っ!』 表へ出た僕も、片膝をついたままだった。 身体にのしかかる重さが消えたわけじゃない。むしろ実際に受けてみて、その異常さを理解したのか、僕の顔が苦痛に歪む。 それでも、震える腕を前へ突き出した。 『お願い……守って!』 その声に応えるように光が周囲へ広がると、半透明の障壁が僕を包み込む。 全身を押さえつけていた重さが、わずかに緩んだ。 いや、消えたわけじゃない。 見えない力が上から押し潰そうとするたび、それを拒むように障壁の表面が震え、光が激しく明滅する。 「これは……」 初めて、男の表情がわずかに動いた。 僕は床についた手に力を込め、身体を起こしていく。 『うぅ……っ!』 片膝をついた姿勢から、少しずつ。 押し潰そうとする力に抗いながら、震える脚で立ち上がる。 『まだ……大丈夫……!』 障壁が軋むように揺れる。 額には汗が滲み、呼吸も苦しそうだった。 それでも僕は両足で床を踏みしめ、男と向かい合った。 「……なるほど。防ぐか」 男がこちらへ向けていた手に、わずかに力を込めると、障壁が大きく震えた。 『うっ……!』 僕の身体が沈みかける。 けれど、歯を食いしばって踏みとどまった。 男はそんな僕を見据えたまま、静かに告げる。 「だが――いつまでもつかな?」 男の言葉とともに、障壁へかかる力がさらに増した。 『うぅ……っ!』 僕が苦しげに声を漏らす。 半透明の障壁は押し潰そうとする力をどうにか食い止めているものの、その表面には絶え間なく光の波紋が走っていた。 障壁を維持することに力を使い続けている以上、この状況を変えることはできない。 『――代わってください』 そんな中、賢者の冷静な声が頭の奥に響いた。 『少し試したいことがあります』 『で、でも……僕が退いたら、バリアが……』 『承知しています。タイミングはこちらで合わせます』 僕は一瞬だけ迷ったものの、すぐに頷く。 『……分かった。任せるよ』 意識が切り替わる。 僕の姿が消えるのと同時に、身体を守っていた障壁が光の粒となって弾けた。 『――術式展開』 表へ出た賢者が、間髪入れず床へ片手をつく。 『構造変成――隆起』 低い振動とともに、ひび割れたコンクリートの床が盛り上がった。 せり上がった塊は瞬く間に高さを増し、賢者と男との間を隔てる壁となる。 その直後、全身を押さえつけていた力が消えた。 賢者は何事もなかったかのように立ち上がると、眼鏡の位置を指先で直した。 『やはり、他者への能力行使には、対象を視界に捉える必要がある』 壁の向こうから、足音が聞こえてくる。 このまま回り込まれれば、再び姿を捉えられる。 そうなれば、またあの力で押さえつけられるだろう。 『お嬢。次はあなたの番です』 賢者が壁際へ身体を寄せ、そのまま意識を切り替える。 長い青髪が揺れ、装いが変わる。 表へ出たお嬢は壁に背を預けたまま右手を差し出し、その手の中に一丁の拳銃を生成した。 『そこですわ!』 乾いた銃声が、廃ビルの中に響き渡る。 男は咄嗟に身を引き、銃弾をかわした。 お嬢は間髪入れず、さらに引き金を引く。 二発、三発と放たれた銃弾に追われ、男の身体が床から浮き上がった。 白い外套を翻しながら上方へ逃れ、そのまま銃弾の軌道から外れていく。 「……なるほど」 その動きを見て、俺にも賢者の狙いが分かった。 『ええ。飛行へ移った途端、こちらへの力が途切れました。どうやら自身と他者、同時に能力を行使することはできないようですね』 お嬢はなおも銃口を男へ向け、続けざまに引き金を引く。 乾いた銃声が響くたび、男は空中で軌道を変えながら銃弾をかわしていく。 やがて吹き抜けを横切ると、その先に並ぶ太いコンクリート柱の一本へと身を滑り込ませた。 白い外套が柱の陰へ消え、直後に床へ降り立つ音が聞こえた。 お嬢もそこで銃撃を止める。 『姿を隠しましたわね』 『あの能力は重力操作でしょう。自身に作用させることで飛行し、対象へ作用させれば身体にかかる重力を増大させる。先ほど私たちが床へ押さえつけられたのも、そのためです』 『だったら、今がチャンスじゃねぇか』 戦闘狂の声が弾み、身体の主導権が切り替わる。 『ハッ! ようやく俺の出番だな!』 戦闘狂は床を強く蹴り、男が身を隠した柱へ向かって一気に駆け出した。 強化された脚力で瞬く間に距離を詰め、柱の脇へと迫っていく。 そして、その向こうから白い外套が覗いた瞬間、男もこちらの姿を捉えた。 『――ッ!』 途端に、全身へ凄まじい重さがのしかかった。 それまでの勢いが一気に削がれ、踏み出した足が床へ沈み込む。 膝が折れかけるほどの力に押さえつけられながらも、戦闘狂は歯を食いしばって踏みとどまった。 『ぐっ……!』 肩から全身を押し潰そうとする力をまともに受け、それでも震える脚で一歩を踏み出す。 男の表情が険しくなる。 「まだ……動けるのか」 『この程度で、止められると思ってんじゃねぇぞ!!』 戦闘狂は獰猛な笑みを浮かべると、床を踏み砕く勢いでもう一歩前へ出た。 男は、もう目の前にいる。 重力に抗いながら右腕を強引に引き絞り、渾身の力を込めて拳を振り抜いた。 『おらぁッ!!』 鈍い衝撃音とともに男の身体が宙を舞い、そのまま数メートル先の床へ叩きつけられた。 同時に、全身を押さえつけていた重さが消える。 『っはぁ……! やっぱ殴るのが一番手っ取り早ぇな』 戦闘狂は大きく息を吐くと、軽くなった肩を回した。 男は床に片手をつき、ふらつきながらも身体を起こそうとしていた。 まともに一撃を受けたせいか、その動きは鈍い。 それでも、まだ戦意は失っていないらしい。 「まだ……終わっていない……」 こちらを睨みつけ、再び立ち上がろうとする。 『あはっ。じゃあ次はボクにやらせてよ』 悪の楽しげな声が頭の奥で響き、意識が切り替わる。 そして表へ出ると、先ほどまでとは打って変わって、ゆっくりと男へ歩み寄っていく。 「……何のつもりだ」 『アハッ。そんな怖い顔しないでよ』 悪は楽しそうに笑いながら、なおも距離を詰める。 「止まれ」 再び、身体へ重さがのしかかろうとした――その瞬間。 悪は一気に踏み込み、伸ばされた男の腕を掴んだ。 『捕まえた。ねえ――人間の心って、どこまで壊したら元に戻れなくなると思う?』 「な――」 男の瞳が大きく見開かれ、喉の奥から掠れた声が漏れた。 「ぁ……あ……」 身体から力が抜けていく。 先ほどまで悪を押さえつけようとしていた重力も完全に消え、男はその場に崩れ落ちた。 悪は掴んでいた腕を離すと、倒れた男を見下ろして楽しそうに笑った。 『あはっ。壊れちゃった』 悪の楽しげな笑い声を最後に、身体の主導権が俺へと戻ってくる。 「……っ」 途端に全身へ疲労が押し寄せ、その場に膝をつきそうになった。 「翔!? 無事なの!?」 床に落ちていたスマホから、澪の声が聞こえる。 「……なんとかな」 「翔、そこから離れて! まだ終わってない!」 「……まだ!?」 「説明は後! 今は私の言う通りに走って!」 またそれかよ、と言い返したくなる。 それでも、今は澪を信じるしかなかった。 「……分かったよ!」 スマホを握りしめ、再び走り出した。
翔「いや、空飛ぶわ、重くされるわ……なんなんだよ、あいつ」 賢者『厄介な能力でしたが、制約さえ分かれば対処は可能です』 戦闘狂『難しいこと考えなくても、最後はぶん殴りゃいいんだよ!』 お嬢『そこまで持っていったのは、わたくしたちですけれどね』 戦闘狂『細けぇことはいいんだよ!』 悪『あはっ。でも最後に決めたのはボクだよねぇ?』 賢者『ともあれ、まだ追跡は終わっていないようですね』 お嬢『次回、“白昼のカーチェイス”。今度はもう少し派手に参りましょうか』 翔「嫌な予感しかしないんだけど!?」

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